タイムカードの時刻から給与額まで、計算の流れは5ステップに分解できます。この記事では、時給単価の求め方、割増賃金の掛け方、エクセルでの具体的な計算例、そして間違いを見つける検算のポイントまでを、中小企業の給与担当者向けに順を追って解説します。

この記事は、自分の手で計算する方向けの手順編です。そもそも給与計算を自社でやるか、給与ソフト・社労士に任せるか、勤怠システムに給与計算機能まで求めるかという分担の決め方は勤怠システムに給与計算機能は必要かで解説しています。

よくある困りごと

場面起きることなぜ起きるか
「7時間45分」を「7.45」のまま時給に掛けた支給額が毎月少しずつずれる60進法の時間を10進法に直さずに計算しているため(検算のポイント)
月給制の時給単価を、その月の所定労働時間で割って出した同じ残業時間でも月によって残業代が変わる単価の分母は年間をならした月平均所定労働時間を使うため(時給単価を求める)
22時を過ぎた残業に、時間外の25%しか付けていない深夜の割増が未払いになる時間外と深夜が重なる時間は、合わせて50%以上になるため(割増賃金を計算する)
変形労働時間制や固定残業代があるのに、通常の式で計算した時間外の判定や基礎単価を取り違えるこの手順の表は1日8時間・週40時間の通常の労働時間制が前提のため(割増賃金を計算する)
支給したあとで計算の誤りに気づいた差額の精算と、従業員への説明が必要になる確定の前に前月との比較や時間数の突き合わせをしていないため(検算のポイント)

自分で確認・修正できること

  1. タイムカードから通常・時間外・深夜・法定休日の時間を出し、区分の合計が実働時間の月合計と一致するかを確かめます(労働時間の集計と区分)。
  2. 時間数を10進法に直します。換算は60進法と10進法の変換早見表で照らします。
  3. 月給制の人は、月平均所定労働時間で時給単価を出します(時給単価を求める)。
  4. 区分ごとの時間と単価を割増賃金の電卓に入れ、自分の計算と比べます。
  5. 確定の前に、前月より大きく変わった人だけ理由を確かめます(検算のポイント)。

給与計算の前後の工程は、このカテゴリの記事にあります。集計表の作り方はタイムカード集計表をエクセルで作る方法、締めから支払いまでの日数は締め日から支払日まで何日あれば間に合うか、締め作業の短縮は締め作業を3日から半日に短縮する方法、取り込みでずれやすい項目は勤怠データを給与ソフトに取り込む方法、外部への依頼は給与計算を社労士に依頼する方法で確かめられます。

給与計算の全体像。5つのステップ

タイムカードから給与額にたどり着くまでの流れは、次の5ステップです。

ステップ 作業 アウトプット
1. 集計 タイムカードの時刻から日ごとの実働時間を計算 実働時間の月合計
2. 区分 通常・時間外・深夜・休日に振り分け 区分ごとの時間数
3. 単価 1時間あたりの賃金(時給単価)を算出 時給単価
4. 割増 区分ごとに割増率を掛けて金額化 基本給・残業代など支給額
5. 検算 前月比較・再計算で誤りを確認 確定した給与額

つまずきやすいのはステップ1の集計(60進法の変換ミス)と、ステップ4の割増(率の掛け間違い・漏れ)です。順番に見ていきます。

ステップ1-2。労働時間の集計と区分

まず日ごとの実働時間を「退勤 - 出勤 - 休憩」で求め、月合計を出します。計算式と60進法の注意点はタイムカードの計算方法で詳しく解説しています。

次に、実働時間を「通常」「時間外(1日8時間・週40時間超)」「深夜(22時から翌5時)」「法定休日」の4区分に振り分けます。区分によって掛ける割増率が変わるため、ここが給与計算の土台になります。法定休日がどの曜日かは就業規則の定めによるので、法定休日と所定休日の違いで確認してください。

ステップ3。時給単価を求める

時給制のパート・アルバイトは契約時給がそのまま単価です。月給制の場合は、次の式で1時間あたりの単価に換算します。

時給単価 = 月給 ÷ 月平均所定労働時間

月平均所定労働時間は「(365日 - 年間休日日数) × 1日の所定労働時間 ÷ 12か月」で求めます。年間休日110日・1日8時間の会社なら、(365 - 110) × 8 ÷ 12 = 170時間です。月給25万円ならば、250,000円 ÷ 170時間 = 約1,471円が時給単価になります。

なお、月給のうち家族手当や通勤手当など一部の手当は、割増賃金の基礎から除外できます。除外できる手当の範囲は割増賃金の計算方法4ステップで解説しています。

ステップ4。割増賃金を計算する

区分ごとの時間数に、時給単価と割増率を掛けます。

区分 割増率 計算式
法定時間外労働 25%以上 単価 × 1.25 × 時間数
月60時間を超える時間外 50%以上 単価 × 1.50 × 時間数
深夜労働(22時-翌5時) 25%以上 単価 × 0.25 × 時間数を加算
時間外かつ深夜 50%以上 単価 × 1.50 × 時間数
法定休日労働 35%以上 単価 × 1.35 × 時間数

月60時間超の50%割増は、2023年4月から中小企業にも適用されています。時間外が恒常的に月60時間へ近づいている場合は、36協定の上限管理もあわせて確認が必要です。

なお、この表は通常の労働時間制(1日8時間・週40時間)が前提です。1ヶ月単位の変形労働時間制やフレックスタイム制を採っている場合、または固定残業代・歩合給がある場合は、時間外の判定や割増の基礎単価そのものが変わるため、この式のままでは誤りやすくなります。該当する場合は、ステップ1-2の集計・区分までを自社で行い、計算は社労士に渡すのが安全です。

エクセルでの計算例

時給1,200円のパート従業員が、実働160時間(うち法定時間外10時間、深夜なし)だった月の例です。

通常分: 1,200円 × 150時間 = 180,000円
時間外分: 1,200円 × 1.25 × 10時間 = 15,000円
合計(額面の基礎): 195,000円

エクセルでは、区分ごとの時間数を10進法の数値(10時間15分なら10.25)にしたうえで、「=単価セル*1.25*時間セル」の形の式を区分の数だけ用意します。時刻形式([h]:mm)のセルから数値に直すときは24を掛けます。集計表の作り方そのものはタイムカード集計表をエクセルで作る方法を参照してください。

1円未満の端数が出た場合、50銭未満を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げる処理が通達で認められています。一律の切り捨ては未払いのもとになるため避けてください。

ステップ5。検算のポイント

給与計算の誤りは、支給後に発覚すると差額精算と信頼低下の両方が痛手になります。確定前に次の3点を確認してください。

前月との比較。従業員ごとに支給額を前月と並べ、大きく変動した人だけ理由を確認します。変動理由が説明できない場合は集計ミスの可能性が高いです。

時間数の再チェック。区分ごとの時間数の合計が実働時間の月合計と一致するかを確認します。ずれていれば振り分けの漏れか二重計上です。

60進法の混入チェック。「.15」「.30」「.45」で終わる時間数が計算式に入っていないかを見ます。10進法なら本来「.25」「.5」「.75」になるはずの箇所です。

給与ソフト・社労士への引き渡し

自社で最後まで計算せず、区分済みの時間数までを用意して外部へ渡す分業も有効です。給与計算ソフトを使う場合はCSVで取り込むのが確実で、手順は勤怠データを給与ソフトに取り込む方法にまとめています。社労士や給与計算代行へ依頼する場合の費用相場と渡し方は給与計算を社労士に依頼する方法をご覧ください。

いずれの場合も、渡す側の仕事は「タイムカードの時刻を正確に集計・区分すること」に集約されます。この工程は、タイムカードを撮影してOCRでデータにすると、転記と手計算の手間を減らせます。区分ごとの時間を出す方法はパシャ勤怠でできることにまとめています。

ここからは専門家へ

次の場面は、記事の手順で決めずに専門家へ相談します。相談先ごとに扱える業務の範囲が法律で決まっています。

場面相談先持っていく資料根拠
社会保険料の標準報酬月額の決め方や、算定・月額変更の届出の判断がつかない社会保険労務士賃金台帳・直近3か月の支給額・被保険者の一覧社会保険労務士法第27条(第2条第1項第1号から第2号までの事務)
変形労働時間制・固定残業代・歩合給があり、時間外の判定や基礎単価を決めきれない社会保険労務士就業規則・賃金規程・雇用契約書社会保険労務士法第27条(第2条第1項第1号から第2号までの事務)
手当や現物の支給の課税の扱いなど、自社で判断のつかない個別の税額がある税理士給与明細・支給の内訳・源泉徴収簿税理士法第52条(第2条の税理士業務)

社会保険労務士法第27条は、社会保険労務士又は社会保険労務士法人でない者が、他人の求めに応じ報酬を得て、第2条第1項第1号から第2号までの事務(労働社会保険諸法令に基づく申請書等の作成とその提出の代行、申請等の事務代理、個別労働関係紛争のあっせん等の手続の代理、帳簿書類の作成)を業として行うことを禁じています。

会社が自社の就業規則を作って届け出ることや、自社の社会保険・雇用保険の手続きをすることは、会社自身の事務で、第27条の「他人の求めに応じ報酬を得て」行う事務ではありません。社会保険労務士に相談するのは、規程の作り方や手続きの判断が自社でつかないときです。

税理士法第2条は、税理士の業務を、他人の求めに応じ、租税に関し、税務代理・税務書類の作成・税務相談を行うことと定めています。第52条は、税理士又は税理士法人でない者が、この税理士業務を行うことを禁じています。

会社が自社の従業員の給与から源泉徴収し、年末調整をすることは、所得税法第190条が給与の支払者に求めている会社自身の事務で、税理士法第2条の「他人の求めに応じ」て行う税理士業務ではありません。税理士でなくても、会社が自分で行えます。税理士に相談するのは、自社で判断のつかない個別の税額や課税の扱いがあるときです。

パシャ勤怠でできること

パシャ勤怠は、紙のタイムカードをスマートフォンで撮影し、AI-OCR で勤怠データに変換するクラウド勤怠管理サービスです。今のタイムレコーダーと紙のタイムカードは、そのまま使えます。

出力するのは、法定休日・所定休日・時間外・深夜の区分ごとの時間です。金額は、その時間を給与ソフトに入れて計算します。

読み取った結果は、目印の付いた行から先に確かめ、続けて元の画像と見比べていけば、紙から打ち直す手間をかけずに確認を終えられます。

集計結果は Excel・CSV でダウンロードでき、給与計算ソフトへの取り込み(取り込み設定で列を対応づけ)や、社労士・給与計算代行への受け渡しに使えます。

料金は1人あたり月100円(税抜)で、初期費用はかかりません。

よくある質問

残業代の端数はどう処理すればよいですか?

1時間あたりの単価や1か月の割増賃金の総額に1円未満の端数が出た場合、50銭未満を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げる処理が通達で認められています。一方、日々の残業時間そのものを15分単位などで切り捨てる処理は未払いリスクがあるため、時間は1分単位で集計し、端数処理は金額の段階で行うのが安全です。

給与計算だけを外注することはできますか?

できます。社労士事務所や給与計算代行に、区分済みの勤怠データ(実働・残業・深夜・休日の時間数)を渡せば、割増計算から給与明細の作成までを任せられます。外注する場合でも勤怠の集計は自社側の仕事として残るため、タイムカードの集計を自動化しておくと、毎月の引き渡しがエクセル1ファイルで済むようになります。

年末調整は、税理士に頼まないといけませんか?

会社が自社の従業員の給与から源泉徴収し、年末調整をすることは、所得税法第190条が給与の支払者に求めている会社自身の事務です。税理士でなくても、会社が自分で行えます。税理士に相談するのは、自社で判断のつかない個別の税額や課税の扱いがあるときです。

この記事のまとめ
  • 給与計算は「集計→区分→単価→割増→検算」の5ステップに分解できる
  • 月給制の時給単価は「月給 ÷ 月平均所定労働時間」。例: 25万円÷170時間=約1,471円
  • 割増率は時間外25%・月60時間超50%・深夜+25%・法定休日35%が最低ライン
  • 時間は1分単位で集計し、端数処理は金額の段階で50銭ルールを使う

パシャ勤怠は、撮影したタイムカードから実働・残業・深夜・休日の区分ごとの時間を集計し、Excel で出力するサービスです。給与計算の前段を丸ごと自動化したい方は、お問い合わせいただければ無料のお試し(登録した月の翌月末まで)でご確認いただけます。