タイムカードの時刻から給与額まで、計算の流れは5ステップに分解できます。この記事では、時給単価の求め方、割増賃金の掛け方、エクセルでの具体的な計算例、そして間違いを見つける検算のポイントまでを、中小企業の給与担当者向けに順を追って解説します。
給与計算の全体像。5つのステップ
タイムカードから給与額にたどり着くまでの流れは、次の5ステップです。
| ステップ | 作業 | アウトプット |
|---|---|---|
| 1. 集計 | タイムカードの時刻から日ごとの実働時間を計算 | 実働時間の月合計 |
| 2. 区分 | 通常・時間外・深夜・休日に振り分け | 区分ごとの時間数 |
| 3. 単価 | 1時間あたりの賃金(時給単価)を算出 | 時給単価 |
| 4. 割増 | 区分ごとに割増率を掛けて金額化 | 基本給・残業代など支給額 |
| 5. 検算 | 前月比較・再計算で誤りを確認 | 確定した給与額 |
つまずきやすいのはステップ1の集計(60進法の変換ミス)と、ステップ4の割増(率の掛け間違い・漏れ)です。順番に見ていきます。
ステップ1-2。労働時間の集計と区分
まず日ごとの実働時間を「退勤 - 出勤 - 休憩」で求め、月合計を出します。計算式と60進法の注意点はタイムカードの計算方法で詳しく解説しています。
次に、実働時間を「通常」「時間外(1日8時間・週40時間超)」「深夜(22時から翌5時)」「法定休日」の4区分に振り分けます。区分によって掛ける割増率が変わるため、ここが給与計算の土台になります。法定休日がどの曜日かは就業規則の定めによるので、法定休日と所定休日の違いで確認してください。
ステップ3。時給単価を求める
時給制のパート・アルバイトは契約時給がそのまま単価です。月給制の場合は、次の式で1時間あたりの単価に換算します。
時給単価 = 月給 ÷ 月平均所定労働時間
月平均所定労働時間は「(365日 - 年間休日日数) × 1日の所定労働時間 ÷ 12か月」で求めます。年間休日110日・1日8時間の会社なら、(365 - 110) × 8 ÷ 12 = 170時間です。月給25万円ならば、250,000円 ÷ 170時間 = 約1,471円が時給単価になります。
なお、月給のうち家族手当や通勤手当など一部の手当は、割増賃金の基礎から除外できます。除外できる手当の範囲は割増賃金の計算方法4ステップで解説しています。
ステップ4。割増賃金を計算する
区分ごとの時間数に、時給単価と割増率を掛けます。
| 区分 | 割増率 | 計算式 |
|---|---|---|
| 法定時間外労働 | 25%以上 | 単価 × 1.25 × 時間数 |
| 月60時間を超える時間外 | 50%以上 | 単価 × 1.50 × 時間数 |
| 深夜労働(22時-翌5時) | 25%以上 | 単価 × 0.25 × 時間数を加算 |
| 時間外かつ深夜 | 50%以上 | 単価 × 1.50 × 時間数 |
| 法定休日労働 | 35%以上 | 単価 × 1.35 × 時間数 |
月60時間超の50%割増は、2023年4月から中小企業にも適用されています。時間外が恒常的に月60時間へ近づいている場合は、36協定の上限管理もあわせて確認が必要です。
エクセルでの計算例
時給1,200円のパート従業員が、実働160時間(うち法定時間外10時間、深夜なし)だった月の例です。
通常分: 1,200円 × 150時間 = 180,000円
時間外分: 1,200円 × 1.25 × 10時間 = 15,000円
合計(額面の基礎): 195,000円
エクセルでは、区分ごとの時間数を10進法の数値(10時間15分なら10.25)にしたうえで、「=単価セル*1.25*時間セル」の形の式を区分の数だけ用意します。時刻形式([h]:mm)のセルから数値に直すときは24を掛けます。集計表の作り方そのものはタイムカード集計表をエクセルで作る方法を参照してください。
1円未満の端数が出た場合、50銭未満を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げる処理が通達で認められています。一律の切り捨ては未払いのもとになるため避けてください。
ステップ5。検算のポイント
給与計算の誤りは、支給後に発覚すると差額精算と信頼低下の両方が痛手になります。確定前に次の3点を確認してください。
前月との比較。従業員ごとに支給額を前月と並べ、大きく変動した人だけ理由を確認します。変動理由が説明できない場合は集計ミスの可能性が高いです。
時間数の再チェック。区分ごとの時間数の合計が実働時間の月合計と一致するかを確認します。ずれていれば振り分けの漏れか二重計上です。
60進法の混入チェック。「.15」「.30」「.45」で終わる時間数が計算式に入っていないかを見ます。10進法なら本来「.25」「.5」「.75」になるはずの箇所です。
給与ソフト・社労士への引き渡し
自社で最後まで計算せず、区分済みの時間数までを用意して外部へ渡す分業も有効です。給与計算ソフトを使う場合はCSVで取り込むのが確実で、手順は勤怠データを給与ソフトに取り込む方法にまとめています。社労士や給与計算代行へ依頼する場合の費用相場と渡し方は給与計算を社労士に依頼する方法をご覧ください。
いずれの場合も、渡す側の仕事は「タイムカードの時刻を正確に集計・区分すること」に集約されます。この工程は、タイムカードを撮影してOCRで自動データ化すれば、転記も手計算もなしで完了します。読み取り結果は残業・深夜まで区分された状態でエクセル出力できるため、給与ソフトにも社労士にもそのまま渡せます。
よくある質問
残業代の端数はどう処理すればよいですか?
1時間あたりの単価や1か月の割増賃金の総額に1円未満の端数が出た場合、50銭未満を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げる処理が通達で認められています。一方、日々の残業時間そのものを15分単位などで切り捨てる処理は未払いリスクがあるため、時間は1分単位で集計し、端数処理は金額の段階で行うのが安全です。
給与計算だけを外注することはできますか?
できます。社労士事務所や給与計算代行に、区分済みの勤怠データ(実働・残業・深夜・休日の時間数)を渡せば、割増計算から給与明細の作成までを任せられます。外注する場合でも勤怠の集計は自社側の仕事として残るため、タイムカードの集計を自動化しておくと、毎月の引き渡しがエクセル1ファイルで済むようになります。
- 給与計算は「集計→区分→単価→割増→検算」の5ステップに分解できる
- 月給制の時給単価は「月給 ÷ 月平均所定労働時間」。例: 25万円÷170時間=約1,471円
- 割増率は時間外25%・月60時間超50%・深夜+25%・法定休日35%が最低ライン
- 時間は1分単位で集計し、端数処理は金額の段階で50銭ルールを使う
パシャ勤怠は、タイムカードを撮るだけで実働・残業・深夜・休日の区分まで自動集計し、給与計算にそのまま使えるエクセルを出力するサービスです。給与計算の前段を丸ごと自動化したい方は、お問い合わせいただければ1ヶ月の無料お試しでご確認いただけます。