勤怠の集計が終わっても、給与ソフトへの入力がまた手作業。数字の転記ミスが怖くて、二重チェックに時間を取られている担当者の方は多いのではないでしょうか。この記事では、勤怠データをCSVで給与ソフトに取り込む基本手順と、主要3ソフトの対応状況、そして残業内訳や欠勤控除などつまずきやすい項目の合わせ方を整理します。
よくある困りごと
| 場面 | 起きること | なぜ起きるか |
|---|---|---|
| 集計した勤怠を、給与ソフトに手で打ち直している | 20人・6項目で120マスの入力と読み合わせが毎月かかる | 勤怠のデータを給与ソフトの取り込みの形で出していないため(締めの最後のボトルネック) |
| 勤怠側と給与側のどちらで金額を計算するか決めていない | 同じ残業代を二重に計算し、両者の数字が合わない | 打刻から振込までの5つの工程の分担を先に決めていないため(勤怠と給与計算の分担) |
| 残業の内訳を1つの列にまとめて渡した | 法定内残業や月60時間超の分に、違う割増率を掛けてしまう | 割増率は区分ごとに違い、給与ソフト側は受け取った列の意味でしか計算できないため(残業の内訳・欠勤控除・有給) |
| 有給を取った日が、給与ソフトで欠勤として扱われた | 有給の日に欠勤控除がかかる | 有給と欠勤の区分を分けずに列を対応づけたため(残業の内訳・欠勤控除・有給) |
| 分単位の値を、時間の列にそのまま取り込んだ | 時間数が60倍になり、支給額が大きく狂う | 明細の時間は分単位で、給与ソフトが10進法の時間を受け付ける場合は60で割る必要があるため(出力ファイルの列の使い方) |
自分で確認・修正できること
- 打刻から振込までの5つの工程のうち、どこまでを勤怠側で行い、どこからを給与ソフトや社労士に渡すかを決めます(分担を先に決める)。
- 給与ソフトの取り込みの画面で、受け取る列(項目)と単位を書き出します(CSVインポートの基本の流れ)。
- 残業の内訳・欠勤・有給の列を、給与ソフトの項目に1つずつ対応づけます(つまずきやすい項目)。
- 分単位の値は60で割る、「時:分」は10進法に直すなど、単位をそろえます(出力ファイルの列の使い方)。
- 初月は数人分で、取り込んだあとの金額を手計算と照らしてから切り替えます。
取り込みの前後の工程は、このカテゴリの記事にあります。締めから支払いまでの日数は締め日から支払日まで何日あれば間に合うか、割増の計算の手順はタイムカードから給与計算する手順、外部への依頼は給与計算を社労士に依頼する方法で確かめられます。
給与ソフトへの手入力が締めの最後のボトルネック
勤怠の締め作業は「記録→集計→給与計算」の3段階で進みます。タイムカードの集計まで終えても、その結果を給与ソフトに手で打ち直しているなら、締めはまだ終わっていません。
たとえば従業員20人の会社で、出勤日数・労働時間・残業時間・深夜時間・欠勤日数・有給取得日数の6項目を入力すると、それだけで120マスの手入力になります。1マス20秒でも40分、さらに入力後の読み合わせ確認で同じくらいの時間がかかります。
問題は時間だけではありません。転記ミスは給与の誤支給に直結します。誤りが翌月に発覚すれば、差額の精算、給与明細の再発行、従業員への説明と、手入力の何倍もの手間が発生します。Excelで集計している場合も、最後の転記が残る構図は同じです(Excelでの勤怠集計の限界も参考にしてください)。この最後の工程を、CSVの取り込みに置き換えるのが本記事のテーマです。
勤怠と給与計算の分担を先に決める(5つの工程)
タイムカードの打刻から給与の振込までは、大きく5つの工程に分かれます。どこまでを勤怠の仕組みで行い、どこからを給与ソフトや社労士に渡すかを先に決めておくと、受け渡すデータの形も決まります。
| 工程 | 中身 | 担当の例 |
|---|---|---|
| 1. 打刻・記録 | 出退勤の記録 | 従業員(タイムカード) |
| 2. 集計 | 実労働・残業・深夜・休日の時間数を出す | 勤怠の仕組み |
| 3. 確定・承認 | 時間数を確かめて、その月の勤怠を確定する | 勤怠の担当者 |
| 4. 給与計算 | 基本給・手当・割増賃金・控除(社会保険料・所得税)を計算する | 給与ソフトまたは社労士 |
| 5. 明細・振込 | 給与明細の発行と振込 | 給与ソフトまたは社労士 |
1〜3が勤怠、4〜5が給与の領域です。給与計算は、手当の支給基準、欠勤や遅刻の控除の方法、端数処理、変形労働時間制の有無など、会社ごとの就業規則や賃金規程に大きく左右されます。勤怠の確定までを正確に行い、金額の計算は使い慣れた給与ソフトや社労士に任せる分担にしておくと、規程が変わったときの直しも給与側だけで済みます。
受け渡すのは「金額」ではなく「時間数と日数」です。時間数に賃金単価と割増率を掛けて金額にするのが、4の給与計算の工程です。エクセルで自分で計算する手順と計算例はタイムカードから給与計算する手順にまとめています。
CSVインポートの基本の流れ(出力→項目マッピング→取込)
CSV(カンマ区切りのテキストファイル)による勤怠データの取り込みは、どの給与ソフトでもおおむね次の3ステップです。
- ステップ1: 勤怠側からCSVを出力する。従業員コード、出勤日数、労働時間、残業時間などの列を持つファイルを書き出します。
- ステップ2: 項目マッピング(割付)を設定する。CSVのどの列を給与ソフトのどの項目に入れるかを対応付けます。鍵になるのは従業員コードの一致で、勤怠側と給与側で同じコード体系に揃っていないと、正しい人に紐付きません。
- ステップ3: テスト取込で検証してから本取込する。まず数名分で取り込み、残業時間などが意図どおり入ったかを確認してから全員分を流します。
もうひとつの定番のつまずきが時間の表記形式です。「8:30」のような60進法(時:分)と「8.5」のような10進法(小数)のどちらを受け付けるかはソフトや設定により異なります。取込前に、勤怠側の出力形式と給与側の受入形式を必ず突き合わせてください。
主要給与ソフトの勤怠データ取込対応の客観整理
広く使われている3つの給与ソフトは、いずれも公式ヘルプで勤怠データのCSV取込(インポート)の手順が案内されています。以下は2026年7月時点の各社公式ヘルプに基づく整理です。機能名や仕様は変更されることがあるため、取込前に必ず各社の最新情報をご確認ください。
| 給与ソフト | 勤怠データのCSV取込 | 確認しておきたい点 |
|---|---|---|
| 弥生給与 | 対応(勤怠項目を含むデータのインポート機能) | 取込用レイアウトの項目の並び・形式に合わせる |
| freee人事労務 | 対応(勤怠データのCSVインポート) | 指定テンプレートの列構成に合わせる |
| マネーフォワード クラウド給与 | 対応(勤怠データのインポート) | 時間の表記形式(60進・10進)の設定を確認 |
3ソフトとも「CSVを用意し、項目を対応付けて取り込む」という基本構造は共通です。したがって、勤怠側で取り込みやすい形のデータを安定して出せるかが、実務では対応可否そのものより重要になります。
つまずきやすい項目: 残業の内訳・欠勤控除・有給
取込エラーより厄介なのが「取り込めたのに金額が合わない」ケースです。原因の多くは次の3項目にあります。
1. 残業の内訳。労働基準法37条に基づき、割増賃金の率は時間外労働(法定労働時間超)が25%以上、月60時間を超える部分が50%以上、深夜労働(22時〜翌5時)が25%以上、法定休日労働が35%以上と区分ごとに異なります。勤怠側の出力が「残業合計」1本だと、給与側の割増区分に正しく配分できません。法定内残業と法定外残業を分けた列で出力できるかを確認してください(列の読み方の例は後の節)。割増賃金の計算手順は割増賃金の計算4ステップで詳しく解説しています。
2. 欠勤控除。欠勤時の控除は法律で計算式が一律に決まっているわけではなく、就業規則の定めによります。給与ソフトが「欠勤日数」を受け取って自動計算するのか、「控除額」を直接受け取るのかで、CSVに載せるべき列が変わります。
3. 有給。給与ソフト側は有給の取得日数を受け取るだけの構成が多く、残日数の管理は勤怠側の仕事です。取得日を勤怠記録上で欠勤と混同しないよう、区分を分けて集計しておく必要があります。
出力ファイルの列を給与計算にどう使うか
勤怠側から出したファイルの各列が何を表すかが分からないと、どの列にどの割増率を掛けるかが決まりません。ここではパシャ勤怠の出力を例に、列の読み方と間違えやすい点を整理します。
明細のCSVと、月の集計のExcel
明細のCSVは、1人・1日を1行にしたデータです。時間はすべて分単位で出るので、給与ソフトが10進法の時間(8.5時間など)を受け付ける場合は、60で割ってから使います。Excelは、1枚目の「サマリー」に従業員ごとの月の合計が1行ずつ並び、2枚目以降に従業員ごとの日別のシートが続きます。サマリーの時間は「時:分」の表記です。給与ソフトへ月の合計を渡すときはサマリーを、「この残業はどの日の分か」を確かめるときは日別のシートを使います。
| 明細CSVの列 | 意味 | 給与計算での使い方 |
|---|---|---|
| 従業員ID・氏名 | 誰の記録か | 給与ソフトの従業員と突き合わせるキー |
| 日付・出勤・退勤 | 対象日と打刻の時刻 | 時間数の根拠。差異を調べるときに見る |
| 休憩(分) | 休憩の時間 | 実労働から除いた時間 |
| 実労働(分) | 実際に働いた時間 | 基礎の賃金の土台 |
| 所定内(分) | 所定労働時間内の労働 | 割増のない賃金 |
| 残業(分) | 所定を超えた労働 | 割増を判定する対象 |
| 遅刻(分)・早退(分) | 働かなかった時間 | 控除する場合の材料 |
| 始業前(計上外)(分) | 始業時刻より前の打刻のうち、労働時間に数えなかった時間 | 早出を労働時間に数えるかを確かめる材料 |
| 深夜(分) | 深夜帯(22時〜翌5時)に働いた時間。実労働の内数 | 深夜割増を足す対象 |
| 休日 | 休日なら1、そうでなければ0 | 休日の行を拾う |
| ステータス | 通常・欠勤・有給・遅刻・早退 | 欠勤・有給の日数の確認 |
間違えやすい点が2つあります。1つ目は、深夜(分)が実労働の内数であることです。実労働8時間のうち2時間が深夜帯なら、実労働(分)は480、深夜(分)は120と出ます。基礎の賃金は実労働で計算済みなので、深夜について足すのは2割5分以上の割増の部分だけです(労働基準法第37条第4項)。深夜の時間分の賃金をもう一度満額で足すと二重払いになります。2つ目は、休日の行では所定内(分)と残業(分)がどちらも0になり、働いた時間は実労働(分)にだけ出ることです。休日労働は所定内・残業とは別の枠で判定するためで、月の労働時間を「所定内+残業」で合計すると、休日に働いた分がまるごと抜けます。
サマリーは「区分する前の合計」と「割増の区分」の列に分かれる
サマリーには、区分する前の合計(出勤日数・実労働時間・残業時間・60h超残業・深夜時間・遅刻・早退・休日出勤・欠勤日数・有休取得日数)と、割増率ごとに分けた列が並びます。割増の計算に使うのは区分の列です。
| 割増の区分 | 使う列 | 労働基準法上の最低の率 |
|---|---|---|
| 法定内残業(法定労働時間内の残業) | 法定内残業(1.0) | 割増なし |
| 法定外残業 | 法定外残業(1.25/1.5)。内訳は法定外60h以下・法定外60h超 | 2割5分以上(月60時間を超えた分は5割以上) |
| 平日深夜の時間外 | 平日深夜の時間外(1.5)・平日深夜の時間外60h超(1.75) | 時間外と深夜の率の合計 |
| 法定休日の労働 | 法定休日(1.35)・法定休日深夜(1.6) | 3割5分以上(深夜帯は6割以上) |
| 所定休日・祝日の労働 | 所定休日・祝日(内訳) | 1日8時間・週40時間を超えた分は法定外残業の列にも入る |
「残業時間」「休日出勤」の列は区分する前の数字です。「所定休日・祝日」は内訳で、その時間のうち1日8時間・週40時間を超えた分は「法定外残業(1.25/1.5)」の列にも入っているので、同じ時間に割増を重ねて付けないようにします。区分の列には、就業規則(所定労働時間・休日)の設定が済んだ従業員の値が入ります。
打刻からは決まらないこと
出力された時間数が正しくても、次の前提が実態と合っていなければ給与の金額は合いません。打刻の記録だけでは決まらず、就業規則や労使協定、契約の内容で答えが変わる点です。
- 所定労働時間を何時間と定めているか(所定内と残業の境目が動く)
- どの曜日を法定休日とするか
- 変形労働時間制を採用しているか
- 管理監督者に当たるか
- 固定残業代を採用している場合、何時間分を含めているか
判断に迷う点は、社労士に確かめると確実です。依頼できる範囲と費用の考え方は給与計算を社労士に依頼する方法にまとめています。
タイムカードOCRから給与ソフト取込までの流れ
「CSV連携は勤怠システムを導入している会社の話で、紙のタイムカードのうちは無関係」と思われがちですが、そうではありません。紙のまま、給与ソフトに渡せるデータの出力までを自動化する方法があります。
パシャ勤怠では、月末に紙のタイムカードをスマホで撮影すると、OCR(画像から文字を読み取る技術)が出退勤の時刻をデータ化します。読み取った時刻は就業ルールに基づいて自動集計され、法定内残業・法定外残業・深夜・休日(法定/所定)といった割増区分を分けた月次集計をダウンロードできます(集計一覧はExcel形式。給与ソフトの取込レイアウトに合わせて列を整え、CSV保存してから取り込みます)。日々の出退勤明細はCSVでも出力できます。
タイムレコーダーの買い替えも、従業員の運用変更も必要ありません。撮影からデータ化までの具体的な流れはタイムカードを写真で読み取る仕組みを、毎月の締めの回し方は締め作業を半日に短縮する方法をご覧ください。
次の一手|転記の工程だけをなくすことから始める
給与ソフトもタイムカードの運用も、いまのままで構いません。変えるのは「集計結果を手で打ち直す」工程だけです。撮影→データ化→データ出力→給与ソフト取込という流れが一度できあがれば、翌月からは同じ手順の繰り返しになり、締めにかかる時間は大きく変わります。締め作業全体をどこまで短縮できるかは締め作業を半日にする方法で紹介しています。
パシャ勤怠は、紙のタイムカードをスマートフォンで撮影し、AI-OCR で勤怠データに変換するクラウド勤怠管理サービスです。今のタイムレコーダーと紙のタイムカードは、そのまま使えます。
- 初回は会社情報・従業員・就業規則の3つを準備します。
- 締め日や所定労働時間は最初に一度確かめます。
読み取った結果は、目印の付いた行から先に確かめ、続けて元の画像と見比べていけば、紙から打ち直す手間をかけずに確認を終えられます。
集計結果は Excel・CSV でダウンロードでき、従業員ごとの月の合計は Excel の「サマリー」シートにあります。お使いの給与計算ソフトの取り込み設定で列を対応づけて取り込みます。初月は数人分で照合してから切り替えると、列の対応づけの違いに早く気付けます。
料金は1人あたり月100円(税抜)で、初期費用はかかりません。
よくある質問
CSVの項目名がソフト側と合わないときはどうしますか?
多くの給与ソフトには、取込時にCSVの列と給与項目を対応付ける「項目マッピング(割付)」の設定があり、項目名が違っても列の対応を指定すれば取り込めることが一般的です。マッピングで吸収できない場合は、ソフト指定の列名・並び順に整えたExcelテンプレートを一度作り、毎月そこに貼り付けてCSV保存する運用が安定します。
給与ソフト側の取込設定は毎月やり直しが必要ですか?
取込レイアウトやマッピングの設定を保存できるか、どこまで保存できるかは、給与ソフトによって違います。お使いのソフトのヘルプで確かめておくと、翌月の作業の見通しが立ちます。入社・退社で従業員コードが増減したときや、手当・控除の項目を追加したときは、対応がずれていないかを取込前に確かめてください。
深夜の時間は、実労働時間に足すのですか?
足しません。深夜の時間は、実労働時間のうち深夜帯(22時〜翌5時)と重なった時間を表す内数です。基礎の賃金は実労働時間で計算済みなので、深夜については2割5分以上の割増の部分だけを足します。
休日に働いた日の「所定内」「残業」が0になっています。間違いですか?
間違いではありません。休日として扱った日は所定内・残業のどちらにも数えず、働いた時間は「実労働」にだけ出ます。休日労働は別の枠で判定するためです。月の合計を所定内+残業で出すと休日の分が抜けるので、休日の行は実労働の列で拾ってください。
割増賃金の金額は、誰が計算するのですか?
勤怠側で出すのは、時間外・深夜・休日の時間数と日数までです。その時間数に従業員ごとの単価と割増率を掛けて金額にするのは、給与ソフトまたは社労士(と自社の給与担当者)の工程です。分担を先に決めておくと、受け渡すデータの形が決まります。
- CSV取込の基本は「出力→項目マッピング→取込」の3ステップ。従業員コードの一致が最重要
- 弥生給与・freee人事労務・マネーフォワード クラウド給与はいずれも勤怠CSVの取込に対応(仕様は取込前に公式ヘルプで確認)
- 残業は合計1本ではなく、法定内・法定外・深夜・休日の区分を分けて出力できるかを確認する。深夜は実労働の内数、休日の行は所定内・残業が0
- 勤怠側は時間数と日数の確定まで、金額の計算は給与ソフトか社労士に任せる分担にすると、規程の変更が給与側だけで済む
- 紙のタイムカードのままでも、撮影から割増区分別の集計(Excel)・明細CSVの出力までは自動化できる
勤怠データの給与ソフト連携や、紙のタイムカードのデータ化が自社の運用に合うかどうか、気になる点があればお気軽にお問い合わせください。いまの締め作業の流れを伺ったうえで、手入力をなくす具体的な進め方をご案内します。