毎月末、タイムカードの山を前に「今月も締めに3日かかる」とため息をついていませんか。給与支給日は動かせないため、締めが長引くほど残業や休日出勤で埋め合わせることになりがちです。この記事では、勤怠の締め作業を4つの工程に分解してボトルネックを特定し、紙のタイムカードのまま締めを半日に短縮する具体策と、短くした締めを毎月同じ手順で回すための確認の置き方を解説します。
よくある困りごと
締め作業で担当者が手を止める場面は、おおむね次の4つです。どれも「どこに時間がかかっているか」を工程で分けると原因が見えてきます。
| 場面 | 何が起きるか | なぜ起きるか |
|---|---|---|
| 締めが毎月3日がかりになる | 支給日までの残りが2〜3営業日しかなく、残業や休日出勤で埋める | カードの時刻を表計算ソフトへ打ち込む転記が、締め作業全体の4割超を占めている(一番時間を食っている工程) |
| 入力の分担やテンプレートを整えても、締めが短くならない | 2〜3割しか縮まず、月初の繁忙が続く | 転記を速くしても、転記という工程そのものが残っている(転記をなくす3つの選択肢) |
| 月末に打刻漏れがまとめて見つかる | 本人の記憶があいまいで、1件ごとの確認が長引く | カードの空欄を見るのが締め日だけで、発見が月末に集中している(毎月の回し方) |
| 残業の区分が合わず、給与で差額が出る | 割増賃金の未払いや過払いが起きる | 所定労働時間が8時間より短い会社で、法定内残業と時間外労働を同じ列で数えている(毎月の回し方) |
自分で確認・修正できること
製品を入れる前でも、次の順で締め作業の見直しを始められます。
- 先月の締め作業を「回収・転記・集計・確認」の4工程に分け、工程ごとにかかった時間を書き出します(工程の内訳の表と並べると偏りが見えます)。
- 支給日から逆算して、締めに使える営業日数を出します(逆算スケジュールの立て方)。
- 時間がいちばん長い工程から手を付けます。多くの会社では転記です(転記が重い理由・転記をなくす選択肢)。
- 毎月の手順を「撮る(データにする)・確かめる・出力する」の順に固定し、確認は異常値と打刻漏れと割増の区分に絞ります(毎月の回し方)。
締め作業の内訳を分解する(回収・転記・集計・確認)
勤怠の締め作業が「気づけば3日がかり」になっている場合、最初にやるべきは作業の分解です。締め作業はおおむね回収・転記・集計・確認の4工程に分けられます。工程ごとに時間を測ってみると、時間の使い方に大きな偏りがあることが見えてきます。
以下は、従業員30人・紙のタイムカード運用の製造業を想定した、本記事のモデルケース試算です(1日8時間換算)。実際の時間は人数やカードの状態によって前後します。
| 工程 | 主な作業 | 目安時間 |
|---|---|---|
| 回収・督促 | タイムカードを集め、未提出者に声かけ | 約2時間 |
| 転記 | カードの手書き・印字をExcelや給与ソフトへ入力 | 約10時間 |
| 集計 | 残業・深夜・休日労働の振り分けと合計 | 約6時間 |
| 確認・修正 | 入力ミスや漏れの突き合わせ、本人への確認 | 約6時間 |
| 合計 | 約24時間(約3営業日) |
担当者の時給を2,000円と仮定すると、回収を除く約22時間だけで毎月約4.4万円の人件費に相当します(30名のモデル試算)。
「3日かかる」の正体は、特定の工程への時間集中です。全工程を均等に頑張るのではなく、最も重い工程から手を付けるのが効率化の近道です。
締め作業で一番時間を食っているのはどこか|答えは「転記」
上のモデルケースでは、転記だけで約10時間と全体の4割超を占めます。タイムカード1枚には出勤・退勤・休憩などの時刻が1か月分並んでおり、本記事のモデルケースでは、1枚を読み取ってExcelや給与ソフトに入力する時間を20分前後と見積もっています。30枚なら600分、それだけで10時間です。
さらに転記は後工程にも波及します。手書きの訂正やかすれた印字を読み間違えると集計が合わなくなり、確認・修正の工程が膨らみます。つまり転記は「それ自体が長い」うえに「確認の6時間を生む原因」でもあり、二重に締めを引き延ばしているのです。
逆に言えば、転記をなくせば10時間が消えるだけでなく、入力ミス起点の確認作業も同時に減ります。転記先としてよく使われるExcel集計の具体的な手順と限界はタイムカードのExcel集計の記事で詳しく解説しています。
締め日から支給日までの逆算スケジュールの立て方
賃金は「通貨で・直接・全額を・毎月1回以上・一定の期日を定めて」支払うことが労働基準法第24条で定められています(いわゆる賃金支払の5原則)。支給日を都合で後ろにずらすことは原則できないため、締め作業は支給日から逆算して計画する必要があります。
一般的な締め日と支給日の組み合わせは「末締め・翌月25日払い」「20日締め・当月末払い」「末締め・翌月10日払い」などです。間隔が10日前後と短い会社ほど、締めの圧縮が重要になります。例として末締め・翌月10日払いのケースを逆算してみます。
- 10日: 給与支給日
- 6日頃まで: 振込データの送信(一般に金融機関の総合振込は支給日の2〜4営業日前が締切とされています)
- 4〜5日: 給与計算・明細作成(約2営業日)
- 3日頃まで: 勤怠データの確定期限
つまり締め作業に使えるのは月初の実質2〜3営業日だけです。転記に10時間かかる状態では、この枠に収めるために担当者の残業や休日出勤で埋め合わせることになりがちです。まず自社の逆算表を作ると、「どの工程を何時間まで圧縮すべきか」が数字で見えてきます。
転記をなくす3つの選択肢の比較
入力の分担やExcelテンプレートの整備といった「転記を速くする工夫」では、本記事のモデルケースでの見立てでは短縮幅は2〜3割程度にとどまります。締めを半日にするには、転記という工程自体をなくす必要があります。選択肢は大きく3つです。
| 選択肢 | 転記作業 | 導入時の負担 | 現場の変化 |
|---|---|---|---|
| ①集計機能付きタイムレコーダーへ入替 | ほぼ不要 | 機器の購入・設置 | 機器は入れ替わるが打刻方法はほぼ同じ |
| ②勤怠管理システムへ全面移行 | 不要 | 初期設定・従業員への教育 | 打刻方法が変わり、定着に時間がかかることも |
| ③紙のタイムカードのままOCRでデータ化 | 不要 | スマホがあれば開始可能 | 従業員側の運用は変わらない |
どの方法でも転記はなくなりますが、「締め短縮の効果がいつから出るか」が違います。機器入替や全面移行は選定・設置・教育の期間が必要で、効果が出るまで数週間から数か月かかる例もあります。③は現場の運用を変えないため、導入した月から効果が出やすい方法です。各方式の機能・費用の詳しい比較はタイムカード集計方法4種の比較記事に委ね、本記事では締め時間への効果に絞って紹介しました。
OCRデータ化で締めが半日になる流れ
OCR(画像から文字を読み取ってデータにする技術)を使うと、紙のタイムカードをスマホで撮影するだけで時刻データが電子化されます。締め日の作業は次のように変わります。
- タイムカードを回収する(従来どおり): 1〜2時間
- スマホで撮影する: 30枚で30分程度
- 読み取り結果を画面で確認・修正する: 1〜2時間
- 集計結果を確認し、給与ソフトへCSVで渡す: 30分〜1時間
合計3〜5.5時間、おおむね半日です。冒頭のモデルケースと比べると、10時間かかっていた転記が「撮影30分」に、6時間かかっていた集計が「確認30分〜1時間」に置き換わります。3日から半日への短縮は、この2工程の置き換えによるものです(いずれも本記事のモデルケース試算であり、人数やカードの状態によって前後します)。
撮影からデータ化までの具体的な手順や、きれいに読み取るコツはタイムカードを撮影してデータ化する記事で紹介しています。
毎月の回し方(撮る・確かめる・出力する)
転記をなくしても、毎月の手順が決まっていないと、確認の工程がまた膨らみます。短くした締めを毎月同じ時間で終えるために、手順を「撮る・確かめる・出力する」の3段に固定し、確認する場所を先に決めておきます。表計算ソフトで集計している会社も、同じ順で確認を置けます。
1. 撮る前に: 回収と打刻漏れの発見を早める
打刻漏れは、締め日にまとめて見つけるほど確認が長引きます。週に1度タイムカードの空欄を見るか、データにした時点で空欄の日を一覧で抜き出すと、本人の記憶が新しいうちに確かめられます。
労働安全衛生法第66条の8の3は、事業者に労働者の労働時間の状況を把握することを求めています。打刻漏れの日は、本人と現場責任者に実際の始業・終業を確かめて補い、確かめた日と相手、補った理由を残しておくと、あとで問われたときに説明できます。
2. 撮る(データにする): 転記をなくす
回収したカードは、手で打ち込まずにデータにします。撮影して読み取る方法なら、30名のモデル試算で撮影は30分ほどです。方法の違いは転記をなくす3つの選択肢、撮り方は写真でスキャンしてデータ化する方法の撮影の3原則にまとめています。
3. 確かめる: 異常値・打刻漏れ・割増の区分の3点に絞る
全件を同じ重さで見直すと、確認が締め作業でいちばん長い工程に戻ります。次の3点だけを順に見ます。
- 異常値: 1日の労働時間が12時間を超える行、深夜(22時から翌5時)に働いた行、出勤と退勤が同じ時刻の行。表計算ソフトなら条件付き書式で色を付けておくと、目で見る行だけに絞れます。
- 打刻漏れ: 出勤か退勤の片方しかない日。上の1で確かめた結果と突き合わせます。
- 割増の区分: 法定内残業・時間外労働・深夜労働・休日労働が、それぞれ別の列に分かれているか。
割増の区分で間違いが起きやすいのは、所定労働時間が8時間より短い会社です。労働基準法第32条は、1日8時間・1週40時間を超えて労働させてはならないと定めています。所定労働時間が7時間30分の会社で8時間働いた日は、所定を超えた30分が法定内残業で、時間外労働の割増の対象にはなりません。8時間を超えた部分から、労働基準法第37条第1項の時間外労働の割増(25%以上)がかかります。
深夜と重なる時間は率を足します。労働基準法施行規則第20条は、時間外労働が22時から翌5時に及ぶときは5割以上、法定休日の労働が同じ時間帯に及ぶときは6割以上の率で割増賃金を支払わなければならないと定めています。割増率の一覧と計算の手順は割増賃金の計算方法にまとめています。
4. 出力する: 給与計算へ渡し、記録を残す
確かめた勤怠はCSVなどで出力し、給与ソフトの取り込み設定で列を対応づけて取り込むか、給与計算を頼んでいる社会保険労務士へデータで渡します。取り込みでずれやすい項目は勤怠データを給与ソフトに取り込む方法にまとめています。
タイムカードなどの労働時間の記録は、労働基準法第109条で5年間の保存が定められ、労働基準法第143条の経過措置で当分の間は3年間とされています。紙の原本を手放すかどうかの判断はタイムカードの保存期間の記事で解説しています。
次の一手|タイムカードのまま、撮るだけでデータ化する
「システムの全面移行は現場が混乱しそう」「機器の入替は費用がかかる」という場合、いまの紙のタイムカードを変えずに転記だけをなくすのが現実的な次の一手です。パシャ勤怠は、紙のタイムカードをスマートフォンで撮影し、AI-OCR で勤怠データに変換するクラウド勤怠管理サービスです。
いまのタイムレコーダーはそのまま使えます。
読み取ったあとは、目印の付いた行から先に確かめ、続けて元の画像と見比べていけば、紙から打ち直す手間をかけずに確認を終えられます。
確かめた勤怠は、月次の CSV で出力できます。
料金は月100円/人(税抜)で、初期費用はかかりません。
よくある質問
締め日から給与支給日まで10日しかありません。支給日を後ろにずらすべきですか?
法律上、間隔そのものの定めはありません。労働基準法第24条第2項が求めるのは「毎月1回以上・一定の期日」での支払いです。実務では「末締め・翌月25日払い」のように2週間以上空ける会社が多い一方、10日前後の会社もあります。支給日を後ろへ変更するには就業規則の変更などが必要になるため、一般には締め作業の側を短縮する方が現実的とされています。
月末に打刻漏れがまとめて見つかり、確認に時間がかかります。どうすれば減らせますか?
要点は「発見を早めること」です。月末にまとめて見つけると本人の記憶も曖昧で、1件ごとの確認に時間がかかります。週に1度タイムカードの空欄をチェックする、あるいはデータ化して空欄を一覧で機械的に抽出すると、数日以内に本人へ確認でき、締め日の確認工程が大きく軽くなります。
締め作業のどこから手を付けると、いちばん早く短くなりますか?
転記からです。30名のモデル試算では、締め作業約24時間のうち、タイムカードの時刻を表計算ソフトへ打ち込む転記が約10時間と4割を超えます。転記は時間がかかるだけでなく、入力ミスを探す確認(約6時間)も生むので、転記をなくすと確認の時間も一緒に減ります。
いまエクセルで集計しています。撮影してデータ化する方法に替えると、作業の何が変わりますか?
エクセル集計では、タイムカードの時刻をセルに打ち込む転記と、計算式の管理を担当者が続けます。撮影してデータ化する方法では、紙から打ち込む転記がなくなり、担当者の作業は読み取り結果を元の画像と見比べて確かめることに変わります。30名のモデル試算では、締め作業全体が約24時間から3〜5.5時間(おおむね半日)になります。
- 締め作業は回収・転記・集計・確認の4工程に分解でき、30人規模のモデルケース試算では合計約24時間(約3営業日)
- 最大のボトルネックは転記で全体の4割超。入力ミスを通じて確認工程まで膨らませている
- 支給日から逆算すると締めに使えるのは実質2〜3営業日。転記を残したままの圧縮には限界がある
- 紙のタイムカードのままOCRでデータ化すれば、転記と集計が撮影と確認に置き換わり、締めは3〜5.5時間(おおむね半日)への短縮が見込める
- 毎月は「撮る・確かめる・出力する」の順に固定し、確認は異常値・打刻漏れ・割増の区分の3点に絞る
パシャ勤怠は、紙のタイムカードをスマホで撮るだけでデータ化と集計を行う勤怠サービスです。月100円/人(税抜)・初期費用なしで、締め日の作業から転記をなくせます。「うちの締め作業なら何時間になるか」といった具体的な運用のご相談は、お問い合わせからお気軽にどうぞ。