給与の締め日や支払日をどのように設定すべきか、悩む経営者や労務担当者は少なくありません。「月末締め翌月払い」が一般的とされていますが、企業の資金繰りや給与計算の実務スケジュールによっては、他の組み合わせが適している場合もあります。
本記事では、給与の締め日と支払日の基本的なルールから、よく使われる3つのパターンの比較、変更する際の手続き、そして締め日直後の集計作業を劇的に効率化する方法までを分かりやすく解説します。
締め期間と給料日の電卓
締め日・支払日・締め日がある月を選ぶと、給与計算の対象期間と、土日祝を考慮した実際の支払日が出ます。
繰り上げ・繰り下げは会社の賃金規程の定めによります。判定に使うのは土日・国民の祝日・銀行休業日(12月31日〜1月3日)です。
毎日撮っておけば、締め日には集計結果の確認から始められます。パシャ勤怠なら紙のタイムカードを撮るだけです。
無料で試す給与の締め日・支払日とは|賃金支払5原則との関係
給与の締め日とは、従業員の労働時間や各種手当を計算するための対象期間の最終日のことです。一方、支払日(給料日)は、計算された給与を実際に従業員へ支払う日を指します。
これらは会社が自由に決められるものですが、労働基準法第24条で定められている「賃金支払の5原則」を遵守しなければなりません。5原則には、日本国内で通用する貨幣で支払う「通貨払の原則」(銀行振込の場合は労使協定が必要)、直接本人に手渡すか本人の口座に振り込む「直接払の原則」、勝手な控除を禁止し全額を支払う「全額払の原則」、毎月1回以上支払う「毎月1回以上支払の原則」、決まった期日に支払う「一定期日支払の原則」があります。
特に注意が必要なのが「毎月1回以上支払の原則」です。これは、前回の支払日から次回の支払日までの期間が1か月を超えてはならないという原則です。例えば、1月25日支払いの次が3月1日払いになると、2月中に給与が支払われない期間が生じるため、毎月1回以上払いの原則に違反します。また、支払日は「毎月第4金曜日」のような変動する日ではなく、「毎月25日」のように特定の日として定める必要があります。なお、締め日から支払日までの期間(据置期間)について、労働基準法上の明確な上限はありませんが、あまりに長い期間を空けることは労働者保護の観点から望ましくないとされています。就業規則(賃金規程)への書き方を自社で決めきれないときの相談先は、ここからは専門家へにまとめています。
労働基準法第24条に定められた「1.通貨払、2.直接払、3.全額払、4.毎月1回以上払、5.一定期日払」の5つのルールのことです。締め日と支払日を設定・変更する際は、特に毎月1回以上、一定の期日に支払うルールを逸脱しないよう注意が必要です。
よくある3パターン比較|月末締め翌月払い・月末締め当月払い・15日締め当月25日払い
中小企業でよく採用されている給与の締め日と支払日の組み合わせには、主に以下の3つのパターンがあります。それぞれの特徴やメリット・デメリットを比較してみましょう。
1. 月末締め翌月払い(例:月末締め翌月10日・25日払い)
最も一般的なパターンです。当月の労働時間が確定した後に給与計算を行うため、残業代や各種手当の計算ミスが発生しにくいのが最大のメリットです。ただし、新入社員が入社してから最初の給与を受け取るまでの期間が空いてしまうデメリットがあります。
2. 月末締め当月払い(例:月末締め当月25日払い)
当月分の給与をその月のうちに支払うパターンです。基本給は当月分を先払いし、残業代などの変動分は翌月に精算する形式をとることが一般的です。従業員にとっては早く給与を受け取れるメリットがありますが、会社側にとっては実務上のリスクが高い方法でもあります。例えば、月の途中で退職した従業員がいる場合、「働いていない期間の給与を先払いしている」状態となり、過払い分の返還請求が困難になるリスクがあります。そのため、当月払い(先払い・翌月精算)を採用する場合は、就業規則および賃金規程に「当月払いであることの根拠」と「退職時の精算方法」を明記しておく必要があります。
3. 15日締め当月25日払い
毎月15日に締め、同月の25日に支払うパターンです。締め日から支払日までに約10日間の猶予(実務日数)があるため、残業代も含めた給与計算を当月中に完了させて支払うことができます。新入社員への最初の支払いも比較的スムーズに行えますが、月半ばでの締め処理となるため、月ごとのカレンダー(土日祝日の配置)によって実務日数が圧迫されるケースがあります。
給与の締め日・支払日 3パターン比較
| パターン | メリット | デメリット | 実務の難易度 |
|---|---|---|---|
| 月末締め翌月払い | 残業代の計算ミスが起こりにくい | 新入社員の初回支払までが長い | 低い(推奨) |
| 月末締め当月払い | 従業員が早く給与を受け取れる | 退職時の過払いリスク、二重管理(規定必須) | 高い |
| 15日締め当月25日払い | 当月中に残業代も含めて精算できる | 月半ばの集計作業が発生する | 中程度 |
締め日から支払日まで何日あれば間に合うか|集計・計算・振込準備の逆算
給与の締め日から支払日までの間隔(据置期間)を設計する際は、給与計算にかかる実務日数を正確に逆算することが重要です。一般的に、締め日から支払日までは「10日間以上」空けることが実務上推奨されています。
給与計算の実務は、単に計算ソフトを回すだけではありません。以下のようなステップを限られた日数の中で進める必要があります。
まず、現場から紙のタイムカードや勤務実績を回収し、打刻漏れや誤りのチェック(集計作業)を行います。次に、集計された労働時間をもとに基本給や残業代を計算し、社会保険料や住民税、所得税の控除額を算出します(給与計算)。その後、計算結果のダブルチェックを行い、最終的な支払額を確定させます。
最後に、金融機関へ振込データを送信する「総合振込(総振)」の手続きを行います。多くの金融機関において、他行宛て振込などの場合は「振込指定日の3営業日前(窓口やシステムによっては2営業日前)」までにデータを送信完了している必要があります。土日祝日を挟む場合はさらに実務日数が削られるため、カレンダーを意識したスケジュール設計が欠かせません。
締め日から支払日までの実務フロー
- 1. 勤怠集計打刻漏れ回収・集計
- 2. 給与計算残業代・税金・保険料計算
- 3. 承認・確定計算結果の最終確認
- 4. 振込予約支払日の3営業日前まで
締め日・支払日を変えたいときは何をすればよいか|手続きと注意点
企業の成長や業務効率化にともない、給与の締め日や支払日を変更する(例:月末締め当月払いから、月末締め翌月払いへ移行する)ケースがあります。この変更は労働条件の変更にあたるため、適切な手続きを踏まなければトラブルの原因となります。
まず、就業規則(賃金規程)の変更が必要です。労働基準法第89条に基づき、常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則の変更届を管轄の労働基準監督署へ提出する義務があります。この際、労働基準法第90条に基づき、従業員代表からの「意見書」の添付が必要です。
さらに重要なのが、不利益変更の扱いと従業員の合意です。支払日を後ろにずらす場合、移行月には「給与が支払われない期間」や「1ヶ月の支給額が一時的に減少する期間」が発生し、従業員の生活に影響を及ぼします。労働条件の変更は労働者と使用者の合意によるのが原則で(労働契約法第8条)、就業規則を変更して労働条件を労働者の不利益に変えることは、労働者との合意がない限りできません(労働契約法第9条)。例外として、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ変更が合理的なものであるときは、個別の合意がなくても変更後の就業規則によることができます(労働契約法第10条)。合理的かどうかは、労働者の受ける不利益の程度、変更の必要性、変更後の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況などに照らして判断されるため、支払日の後ろ倒しのように手取りに影響する変更では、説明会での説明と個別の同意書で合意を得てから進めるのが実務上は安全です。
また、移行期の生活資金への配慮として、一時的な「つなぎ融資(前払い)」の実施や、数ヶ月かけて段階的に支払日をスライドさせるなどの猶予措置を検討することが一般的です。移行の設計を自社で決めきれないときの相談先も、ここからは専門家へにまとめています。
社会保険料の控除タイミング
健康保険法第167条において、原則として前月分の社会保険料を当月支払う給与から控除する(翌月控除)仕組みが定められています。支払日を当月払いから翌月払いに変更する場合、この社会保険料の控除タイミングと給与支払いの整合性を再設計しないと、移行月に控除漏れや二重控除のリスクが生じます。実務上の混乱を防ぐためにも、控除サイクルが法律通り適切に移行できているかを必ず確認してください。
締め日直後の集計を短縮する|紙のタイムカードをその日のうちにデータ化
給与の締め日から支払日までの期間を十分に確保していても、毎月の勤怠集計作業が属人化していたり、紙のタイムカードの回収に時間がかかっていたりすると、結局支払日直前に徹夜で給与計算をする羽目になってしまいます。
特に中小企業の製造業などでは、「現場の従業員が紙のタイムカードを使っており、締め日にならないと本社に届かない」「手書きの修正や打刻漏れの確認に追われる」という課題が多く見られます。
この課題を解決するためには、紙のタイムカード運用の良さを残しつつ、集計作業だけをデジタル化する方法が効果的です。例えば、毎日の終業時にタイムカードをスマートフォンで撮影するだけで、自動的に打刻データを読み取り、クラウド上で集計が行える仕組みを導入すれば、締め日に慌てて回収・手入力する必要がなくなります。日次で勤務実績がデータ化されていれば、締め日当日は集計結果の確認から始められ、余裕を持って給与計算へと進むことができます。
よくある困りごと
締め日と支払日の組み合わせは、決めたときより、毎月の運用や変更のときに困りごとが出ます。
| 場面 | 起きること | なぜ起きるか |
|---|---|---|
| 締め日から支払日までが短く、毎月支払日の直前に計算が詰まる | 確認が足りないまま振り込み、誤りを翌月に精算することになる | 回収・集計・給与計算・確認・振込予約(支払日の3営業日前が目安)を逆算した日数が取れていないため(何日あれば間に合うか) |
| 支払日が土日祝に重なる月の扱いを決めていない | 月によって前倒しと後ろ倒しが混ざり、従業員から問い合わせが来る | 前倒しか後ろ倒しかは賃金規程の定めによるため(締め期間と給料日の電卓) |
| 当月払い(先払い)で、月の途中に退職者が出た | 働いていない日の給与を払った状態になり、返してもらいにくい | 先払いの根拠と退職時の精算方法を規程に書いていないため(3パターン比較) |
| 支払日を後ろへずらしたら、移行月に給与の無い期間ができた | 従業員の生活に響き、合意を得ないまま進めると争いになる | 毎月1回以上・一定の期日に支払う原則(労働基準法第24条)と、労働条件の変更の手続きを移行月まで設計していないため(変えたいときの手続き) |
| 支払月を変えた月に、社会保険料の控除がずれた | 控除漏れや二重控除が出る | 社会保険料は前月分を当月の給与から控除する仕組みで、支払月を変えると控除の月と噛み合わなくなるため(社会保険料の控除タイミング) |
自分で確認・修正できること
- 締め日から支払日までの日数を数え、回収・集計・給与計算・確認・振込予約を日付で並べます。振込予約は支払日の3営業日前を目安に置きます(何日あれば間に合うか)。
- 締め期間と給料日の電卓で、来年分の締め期間と実際の支払日を出し、支払日が繰り上がる月を書き出しておきます。
- 賃金規程を開き、締め日・支払日・土日祝のときの扱い・当月払いの精算方法が書かれているかを確かめます(3パターン比較)。
- 締め日・支払日を変えるなら、移行月の支給額と社会保険料の控除の月を1人分で試算してから、説明と同意の段取りを組みます(変えたいときの手続き)。
- 年度や締め期間の途中から勤怠の集計方法を切り替えるときは、最初の締め期間を先に決め、その期間で1の日付を並べてから始めます。
締めから支払いまでの各工程は、このカテゴリの記事で詳しく扱っています。締め作業のどこに時間がかかっているかは締め作業を3日から半日に短縮する方法、集計表の作り方はタイムカード集計表をエクセルで作る方法、給与の計算手順はタイムカードから給与計算する手順、給与ソフトへの受け渡しは勤怠データを給与ソフトに取り込む方法、外部への依頼は給与計算を社労士に依頼する方法で確かめられます。
ここからは専門家へ
次の場面は、記事の手順で決めずに専門家へ相談します。相談先ごとに扱える業務の範囲が法律で決まっています。
| 場面 | 相談先 | 持っていく資料 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 締め日・支払日を変える賃金規程の改定と、移行月の不利益への配慮をどう設計するか決めきれない | 社会保険労務士 | 現在の就業規則(賃金規程)・変更案・移行月の支給額の試算 | 社会保険労務士法第27条(第2条第1項第1号から第2号までの事務) |
| 就業規則の変更届と従業員代表の意見書の手続きで、自社の進め方が正しいか判断がつかない | 社会保険労務士 | 就業規則の変更案・意見書の案・従業員数 | 社会保険労務士法第27条(第2条第1項第1号から第2号までの事務) |
| 支払日の変更や支払いの遅れをめぐって、従業員と争いになった | 弁護士 | 経緯の記録・賃金規程・賃金台帳・説明会の資料と同意書 | 弁護士法第72条 |
社会保険労務士法第27条は、社会保険労務士又は社会保険労務士法人でない者が、他人の求めに応じ報酬を得て、第2条第1項第1号から第2号までの事務(労働社会保険諸法令に基づく申請書等の作成とその提出の代行、申請等の事務代理、個別労働関係紛争のあっせん等の手続の代理、帳簿書類の作成)を業として行うことを禁じています。
会社が自社の就業規則を作って届け出ることや、自社の社会保険・雇用保険の手続きをすることは、会社自身の事務で、第27条の「他人の求めに応じ報酬を得て」行う事務ではありません。社会保険労務士に相談するのは、規程の作り方や手続きの判断が自社でつかないときです。
弁護士法第72条は、弁護士又は弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で、訴訟事件その他一般の法律事件に関して鑑定・代理・仲裁・和解その他の法律事務を取り扱うことや、その周旋をすることを業とすることを禁じています。
次の一手
締め日直後の集計を早く終えるには、締め日を待たずに勤怠をデータにしておくのが近道です。
パシャ勤怠は、紙のタイムカードをスマートフォンで撮影し、AI-OCR で勤怠データに変換するクラウド勤怠管理サービスです。今のタイムレコーダーと紙のタイムカードは、そのまま使えます。
1回のアップロードが10枚以下ならその場で、11枚以上は1日2回(午前2時・午後2時)の一括処理で遅くとも翌朝に読み取ります。締め日の前から撮っておくと、締め日は結果の確認から始められます。無料期間中も最初の20枚はすぐに(その場で)読み取り、21枚目からは1日2回の一括処理で読み取ります。
読み取った結果は、目印の付いた行から先に確かめ、続けて元の画像と見比べていけば、紙から打ち直す手間をかけずに確認を終えられます。
集計結果は Excel・CSV でダウンロードでき、給与計算ソフトへの取り込み(取り込み設定で列を対応づけ)や、社労士・給与計算代行への受け渡しに使えます。
料金は1人あたり月100円(税抜)で、初期費用はかかりません。
よくある質問
月末締め翌月払いにしたいのですが、締め日から支払日まで何日空けておけば足りますか?
労働基準法上、締め日から支払日までの日数に制限はありません。しかし、実務上は「10日間」程度の間隔を空けるのが一般的です。勤務データの回収、打刻エラーの修正、給与計算、そして金融機関への総合振込の期限(通常3営業日前)を逆算すると、これ以下の期間ではカレンダーによって実務が非常に厳しくなるためです。
支払日が土日祝日の場合はいつ支払いますか?
支払日が土日祝日に重なる場合、前倒しで支払うか、後ろ倒しで支払うかは会社の就業規則(賃金規程)の定めに従います。一般的には「前営業日に支払う」とする企業が多いです。後ろ倒しにする場合、支払日が翌月にずれ込むと「毎月1回以上支払の原則」に抵触するため、必ず当月内に支払う設定(例:25日が土曜なら24日金曜に前倒し)にする必要があります。
給与の締め日を変えたいのですが、従業員の同意は要りますか?
締め日や支払日の変更は労働条件の変更にあたり、労働者との合意によるのが原則です(労働契約法第8条・第9条)。就業規則の変更で行う場合は、就業規則の変更手続き(労働基準法第89条・第90条)に加えて、変更後の就業規則の周知と、不利益の程度や変更の必要性などに照らした合理性が要件になります(労働契約法第10条)。特に支払日を後ろにずらす場合は、移行月に一時的な手取り減少などの不利益が生じるため、事前の丁寧な説明と個別の同意書、つなぎ融資などの猶予措置を組み合わせて進めるのが安全です。
締め日を変える月だけ計算期間が短くなり、その月の支給額が減ります。問題はありますか?
その月に入らなかった日の賃金は次の支払日に支払われるので、賃金そのものがなくなるわけではありません。ただ、移行月の手取りが一時的に減るのは従業員にとって不利益なので、本文の「締め日・支払日を変えたいときは何をすればよいか」の手続きを踏んだうえで、差額の前払いや、数か月かけて少しずつずらす方法を組み合わせるのが一般的です。毎月1回以上、一定の期日に支払うこと(労働基準法第24条第2項)は、移行月も守ります。
月の途中で入社した人の最初の給与は、どう日割りすればよいですか?
賃金規程で決めた日割りの方法(暦日数で割る、その月の所定労働日数で割る、など)で、入社日から締め日までを計算します。日割りの計算式は法律で決まっていないので、どの方法を使うかを賃金規程に書いておき、入社のたびに同じ方法で計算します。退職月も同じ方法にそろえると、説明がしやすくなります。
- 給与の締め日・支払日は、労働基準法第24条の「賃金支払5原則」に則って定める必要がある
- 「月末締め翌月払い」は残業代の計算が正確に行いやすく、最も実務の難易度が低いパターンである
- 締め日から支払日までは、金融機関の振込期限などを考慮して「10日間以上」の猶予を設けるのが望ましい
- 締め日や支払日の変更は労働者との合意が原則(労働契約法第8条・第9条)。就業規則の変更で行うときは変更後の就業規則の周知と変更の合理性が要件(労働契約法第10条)で、手取りに影響する変更では個別の同意書で合意を得てから進めるのが安全