「1時間30分」を給与計算に持ち込むとき、1.3と書くか1.5と書くかで支払額が変わります。時刻は60進法、給与計算で使う時間数は10進法という、単位のちがいが原因です。この記事では1分単位の完全な換算表を先に置き、そのうえで「小数に丸めてから掛けると誤差が出る」という実務で見落とされがちな落とし穴と、端数処理が労働基準法上どこまで許されるかを解説します。
早見表|60進法(分)→10進法(時間)1分単位の全表
分を60で割ると10進法の時間数になります。1分から59分までの全てを掲載します。「10進法(小数第2位)」の列に ≠ が付いている行は、小数第2位では割り切れず誤差を含むことを示します。
| 60進法(分) | 10進法(小数第2位) | 正確な値 |
|---|---|---|
| 1分 | 0.02≠ | 0.0167 |
| 2分 | 0.03≠ | 0.0333 |
| 3分 | 0.05 | 0.05 |
| 4分 | 0.07≠ | 0.0667 |
| 5分 | 0.08≠ | 0.0833 |
| 6分 | 0.10 | 0.1 |
| 7分 | 0.12≠ | 0.1167 |
| 8分 | 0.13≠ | 0.1333 |
| 9分 | 0.15 | 0.15 |
| 10分 | 0.17≠ | 0.1667 |
| 11分 | 0.18≠ | 0.1833 |
| 12分 | 0.20 | 0.2 |
| 13分 | 0.22≠ | 0.2167 |
| 14分 | 0.23≠ | 0.2333 |
| 15分 | 0.25 | 0.25 |
| 16分 | 0.27≠ | 0.2667 |
| 17分 | 0.28≠ | 0.2833 |
| 18分 | 0.30 | 0.3 |
| 19分 | 0.32≠ | 0.3167 |
| 20分 | 0.33≠ | 0.3333 |
| 21分 | 0.35 | 0.35 |
| 22分 | 0.37≠ | 0.3667 |
| 23分 | 0.38≠ | 0.3833 |
| 24分 | 0.40 | 0.4 |
| 25分 | 0.42≠ | 0.4167 |
| 26分 | 0.43≠ | 0.4333 |
| 27分 | 0.45 | 0.45 |
| 28分 | 0.47≠ | 0.4667 |
| 29分 | 0.48≠ | 0.4833 |
| 30分 | 0.50 | 0.5 |
| 31分 | 0.52≠ | 0.5167 |
| 32分 | 0.53≠ | 0.5333 |
| 33分 | 0.55 | 0.55 |
| 34分 | 0.57≠ | 0.5667 |
| 35分 | 0.58≠ | 0.5833 |
| 36分 | 0.60 | 0.6 |
| 37分 | 0.62≠ | 0.6167 |
| 38分 | 0.63≠ | 0.6333 |
| 39分 | 0.65 | 0.65 |
| 40分 | 0.67≠ | 0.6667 |
| 41分 | 0.68≠ | 0.6833 |
| 42分 | 0.70 | 0.7 |
| 43分 | 0.72≠ | 0.7167 |
| 44分 | 0.73≠ | 0.7333 |
| 45分 | 0.75 | 0.75 |
| 46分 | 0.77≠ | 0.7667 |
| 47分 | 0.78≠ | 0.7833 |
| 48分 | 0.80 | 0.8 |
| 49分 | 0.82≠ | 0.8167 |
| 50分 | 0.83≠ | 0.8333 |
| 51分 | 0.85 | 0.85 |
| 52分 | 0.87≠ | 0.8667 |
| 53分 | 0.88≠ | 0.8833 |
| 54分 | 0.90 | 0.9 |
| 55分 | 0.92≠ | 0.9167 |
| 56分 | 0.93≠ | 0.9333 |
| 57分 | 0.95 | 0.95 |
| 58分 | 0.97≠ | 0.9667 |
| 59分 | 0.98≠ | 0.9833 |
よく使う値だけ覚えるなら、15分=0.25、30分=0.5、45分=0.75 の3つです。この3つは小数第2位で正確に表せるため、誤差の心配がありません。
逆引き早見表|10進法(時間)→60進法(分)
集計結果が10進法で出てきたとき、何分なのかを確認するための逆引きです。10進法の値に60を掛けます。
| 10進法(時間) | 60進法(分) |
|---|---|
| 0.10時間 | 6分 |
| 0.20時間 | 12分 |
| 0.25時間 | 15分 |
| 0.30時間 | 18分 |
| 0.40時間 | 24分 |
| 0.50時間 | 30分 |
| 0.60時間 | 36分 |
| 0.70時間 | 42分 |
| 0.75時間 | 45分 |
| 0.80時間 | 48分 |
| 0.90時間 | 54分 |
| 1.00時間 | 60分 |
「1時間30分=1.3」が生む未払いの実例
最も多い誤りが、時分の表記をそのまま小数として扱ってしまうことです。1時間30分は1.5時間であって1.3時間ではありません。
時給1,200円の従業員が1日7時間45分働いた場合で比べます。正しくは 7時間45分=7.75時間なので、1,200円 × 7.75 = 9,300円です。これを「7.45」として計算すると 1,200円 × 7.45 = 8,940円となり、1日あたり360円の差が出ます。月20日で7,200円、年間では86,400円の未払いです。従業員1人でこの額なので、10人規模なら年間86万円規模の差になります。
逆に切り上げ方向に誤ると、今度は会社が払いすぎることになります。どちらに転んでも、単位の取り違えは金額の誤りに直結します。
小数に丸めてから掛けると誤差が出る|正しい順序
ここは早見表だけを見ていると気づきにくい点です。1分は0.0166…時間で、小数第2位では正確に表せません。先に小数へ丸めてから時給を掛けると、丸めた分の誤差がそのまま金額に乗ります。
たとえば1日7時間10分(=430分)の勤務を20日分計算するとします。
- 誤りやすい順序:10分を0.17時間と丸める → 7.17時間 → ×20日=143.4時間
- 正しい順序:430分×20日=8,600分 → 8,600÷60=143.33…時間
差は約0.07時間です。時給1,200円なら84円ですが、これが毎月・全従業員に積み上がります。丸めの向きによっては会社側が有利になるため、労働時間の計算で機械的に切り捨てる運用は避けるべきです。
- 日々の労働時間は分のまま合計する
- 10進法への変換は最後に1回だけ行う
- 早見表は「確認用」であって、途中計算を丸めるための道具ではない
実データ|労務相談6,082件に見る「端数・丸め」の実態
この論点がどれくらい実務で詰まっているのかを、公開されている労務相談の実データで確認しました。総務・人事の相談が集まる掲示板から2020年1月〜2026年6月の労務管理カテゴリ6,082件、あわせて専門家Q&A(2009〜2011年掲載分)636件を収集し、機械的に分類した結果です。
| 論点 | 専門家Q&A(2009-2011)636件中 | 実務者の相談(2020-2026)6,082件中 |
|---|---|---|
| 端数処理・丸め | 26件(4.1%) | 77件(1.3%) |
| 週40時間超の判定 | 31件(4.9%) | 118件(1.9%) |
| 休憩の付与・分割 | 36件(5.7%) | 276件(4.5%) |
注目したいのは、15年の隔たりがある2つの資料の両方に、同じ論点が出続けていることです。解説記事も勤怠システムも十分に普及した15年のあいだ、端数処理と時間換算は相談され続けています。知識が足りないのではなく、手作業で計算し続けるかぎり間違いが起こる構造が変わっていない、と読むのが自然です。
しかも「端数処理・丸め」に付く回答は平均4.62件で、相談全体の平均3.78件を上回ります。一問一答では終わらず、やりとりが続く論点だということです。計算の話なので答えは1つに決まりそうに見えて、実際には自社の締め日・就業規則・給与ソフトの仕様が絡み、簡単には決着しません。
※ この集計は正規表現による機械分類で、専門家Q&Aの公式カテゴリと突き合わせた一致率は61.1%(分類体系の差を許容した場合74.2%)です。順位の傾向は信頼できますが、小数第1位の精度を主張するものではありません。また相談件数は「重要度」ではなく「迷いやすさ」を表す点にご注意ください。
端数処理はどこまで許されるか|1分単位が原則
ここは率直に書きます。1日ごとに15分単位や30分単位で切り捨てる運用は、労働基準法違反となる可能性が高いです。
労働基準法24条は賃金の全額払いを定めています。実際に働いた1分1分に賃金が発生するため、日々の労働時間を切り捨てれば、その分が未払いになります。「15分未満は切り捨て」という就業規則を持つ会社は少なくありませんが、この定めがあることをもって適法になるわけではありません。法律を下回る労働条件を定めた就業規則は、その部分について効力を持たないためです。
例外として広く知られているのが、1か月の時間外労働・休日労働・深夜労働それぞれの合計時間数に1時間未満の端数が生じた場合に、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げるという処理です。これは行政通達(昭和63年3月14日 基発第150号)で、常に労働者の不利になるわけではないため違法としては取り扱わないとされているものです。ポイントは次の3点です。
- 「1か月の合計」に対する処理であって、日ごとの切り捨てを認めるものではない
- 切り捨てだけでなく切り上げもセットで行う(切り捨てのみは不可)
- 対象は時間外・休日・深夜の各合計であり、所定労働時間内の賃金には及ばない
なお、始業・終業時刻の記録そのものを丸めることも問題になります。労働時間は実際に労働した時間で把握する必要があるため、9時2分に始業した記録を9時15分として残す運用は、記録の正確性の面で説明がつきません。
※ 個別の運用が適法かどうかは就業規則の定めや実態によって判断が分かれます。自社の運用を変更する際は社会保険労務士にご確認ください。
次の一手|そもそも換算作業をなくす
ここまで書いてきた内容は、裏を返せば「人が換算し続けるかぎり誤差と違反のリスクが残る」ということでもあります。早見表は確認には役立ちますが、毎月の計算を早見表と電卓で行っている限り、転記ミスと丸め誤差はゼロにはなりません。
パシャ勤怠は、紙のタイムカードをスマホで撮影するだけで出勤実績をデータ化するサービスです。労働時間は分単位で保持し、時間外・深夜・休日の区分も自動で集計するため、10進法への換算そのものが実務から消えます。タイムカードの運用や打刻の習慣は今のまま変えずに導入できます。
正直に申し上げると、これで全ての計算問題が解決するわけではありません。変形労働時間制やフレックスタイム制のように、清算期間ごとの独自計算が必要な制度では、別途の設定が要ります。ただし「時分を時間数に直す」「月合計を出す」という、最も件数が多く最も間違えやすい部分は自動化できます。
仕組みの詳細はタイムカードを撮影してデータ化する方法、計算全体の考え方はタイムカードの計算方法をご覧ください。
よくある質問
15分単位で労働時間を切り捨てるのは違法ですか?
1日ごとに15分単位で切り捨てる運用は、労働基準法24条の賃金全額払いに反する可能性が高いです。実際に働いた時間には1分単位で賃金が発生するためです。就業規則に「15分未満切り捨て」と書いてあっても、法律を下回る部分は効力を持ちません。認められているのは、1か月の時間外労働などの合計時間数に1時間未満の端数が出た場合に、30分未満を切り捨て30分以上を切り上げる処理(昭和63年3月14日 基発第150号)で、これは日ごとの切り捨てとは別のものです。
1時間30分は10進法でいくつですか?
1.5時間です。30分を60で割ると0.5になるため、1+0.5=1.5となります。「1.3」と書くのは時分の表記をそのまま小数にした誤りで、時給1,200円なら1日あたり240円の差が出ます。
10進法に直してから足すのと、分のまま足すのとで結果は変わりますか?
変わることがあります。1分は0.0166…時間で小数第2位では正確に表せないため、先に丸めてから合計すると誤差が積み上がります。日々の労働時間は分のまま合計し、10進法への変換は最後に1回だけ行うのが正確です。
- 60進法(分)から10進法(時間)への変換は「分÷60」。15分=0.25、30分=0.5、45分=0.75
- 「1時間30分=1.3」は誤り。1.5が正しく、時給1,200円で7時間45分なら360円の差が出る
- 1分は0.0166…時間で割り切れないため、丸めるのは最後の1回だけにする
- 日ごとの15分単位の切り捨ては労基法24条違反の可能性が高い
- 認められるのは1か月の時間外等の合計に対する30分未満切り捨て・30分以上切り上げ(切り上げもセット)
毎月の換算と集計を手作業で続けている場合は、お問い合わせからお気軽にご相談ください。