タイムカードの集計表は、エクセルの基本機能だけで自作できます。この記事では、列の構成、時刻の表示形式、実働時間と残業を求める関数、月合計の出し方までを、そのまま再現できる形で解説します。あわせて、自作した表を毎月まわすときに必ず残る「転記」という工程についても触れます。
よくある困りごと
| 場面 | 起きること | なぜ起きるか |
|---|---|---|
| 出勤時刻を「900」や「9.00」と入力した | 実働時間が計算されず、空欄やエラーになる | エクセルは「9:00」のようなコロン区切りでないと時刻として扱わないため(時刻の表示形式) |
| 夜勤の日だけ「######」と表示される | その日の実働時間が出ず、月合計もずれる | 退勤時刻が出勤時刻より小さくなり、計算結果がマイナスになるため(実働時間を求める関数) |
| 「1時間30分」を「1.3」と入力した | 月合計が合わず、残業代がずれる | 60進法の時刻と10進法の数値が混ざっているため(つまずきやすいポイント) |
| 集計表を作った担当者が異動し、ルールが変わっても式を直せない | 誤りに気づいても直せないまま使い続ける | 式の意味とルールの値がブックの中に書かれていないため(転記と属人化への備え) |
| 日々の残業を15分単位で切り捨てる式にしていた | 切り捨てた分が未払いになる | 労働時間は1分単位で把握するのが原則のため(つまずきやすいポイント) |
自分で確認・修正できること
- 出勤・退勤・休憩の列がコロン区切りで入力され、実働時間と月合計のセルが「[h]:mm」になっているかを確かめます(時刻の表示形式)。
- 夜勤のある人は、実働時間の式が日またぎに対応しているかを確かめます(実働時間を求める関数)。
- 1人分の月合計を手で計算し直し、集計表の値と比べます。時間を小数に直すときは60進法と10進法の変換早見表で照らします。
- 式の中の「8:00」や深夜の開始時刻を設定欄のセルにまとめ、説明シートに式の意味と変更の記録を書きます(転記と属人化への備え)。
- 締めが終わったブックは確定版として保存し、翌月はシートをコピーして使います(毎月の運用のコツ)。
集計表の先の工程は、このカテゴリの記事にあります。締めから支払いまでの日数は締め日から支払日まで何日あれば間に合うか、給与の計算手順はタイムカードから給与計算する手順、給与ソフトへの受け渡しは勤怠データを給与ソフトに取り込む方法で確かめられます。
集計表の完成形と列の構成
まず、1人1シートで1か月分を管理する形が最も分かりやすい構成です。列は次の7つがあれば、実働時間の集計から給与計算の下準備まで足ります。夜勤やシフト勤務がある職場は、H列に深夜時間を足して8列にします。
| 列 | 項目 | 入力する内容 |
|---|---|---|
| A | 日付 | 2026/7/1 のように日付形式で入力 |
| B | 曜日 | 関数で自動表示(=TEXT(A2,"aaa")) |
| C | 出勤時刻 | 9:00 のようにコロン区切りで入力 |
| D | 退勤時刻 | 18:15 のようにコロン区切りで入力 |
| E | 休憩時間 | 1:00 のように時間で入力 |
| F | 実働時間 | 関数で自動計算(後述) |
| G | 残業時間 | 関数で自動計算(後述) |
| H | 深夜時間(夜勤がある場合) | 関数で自動計算(後述) |
曜日はB2セルに「=TEXT(A2,"aaa")」と入力すれば「水」のように自動表示され、日付を変えるだけで翌月も使い回せます。
準備。時刻の表示形式を設定する
集計表づくりで最初につまずくのが表示形式です。エクセルは時刻を「1日=1」という数値(シリアル値)で管理しているため、設定を誤ると合計が正しく表示されません。
ポイントは2つです。まず、出勤・退勤・休憩の列は「9:00」のように必ずコロン区切りで入力します。「900」や「9.00」と入力すると時刻として認識されず、計算できません。次に、実働時間や月合計を表示するセルの表示形式を「[h]:mm」に設定します。セルの書式設定からユーザー定義を選び、「[h]:mm」と入力してください。角かっこ付きの[h]にすると、24時間を超える合計も「171:30」のように正しく表示されます。角かっこがない「h:mm」のままだと、月合計171時間30分が「3:30」と表示されてしまいます。
実働時間を求める関数
実働時間は「退勤時刻から出勤時刻を引き、休憩時間を引く」だけです。F2セルに次のように入力します。
=D2-C2-E2
9:00出勤、18:15退勤、休憩1:00なら、F2には「8:15」と表示されます。あとはF2をその月の末日までコピーすれば、日ごとの実働時間が自動で計算されます。
夜勤があり退勤が日をまたぐ場合は、そのままだと退勤時刻のほうが小さくなり、エラー(######表示)になります。日またぎに対応するには、F2を次の式に置き換えます。
=IF(D2<C2, D2+1-C2-E2, D2-C2-E2)
退勤時刻が出勤時刻より小さいときは翌日扱い(+1日)で計算する、という意味です。22:00出勤、翌7:00退勤、休憩1:00なら「8:00」と計算されます。
残業時間・深夜時間と月合計の計算
1日8時間を超えた分を残業として集計する場合、G2セルに次のように入力します。
=MAX(0, F2-"8:00")
実働8:15なら残業は「0:15」、実働が8時間以内の日は「0:00」になります。8時間ちょうどを超えない日にマイナスが出ないよう、MAX関数で0との大きいほうを取るのがコツです。
月合計は、実働・残業それぞれの列の末尾にSUM関数を入れるだけです。
=SUM(F2:F32)
このセルの表示形式も「[h]:mm」にしておきます。なお、時給計算などで「171:30」を数値の「171.5時間」に変換したいときは、「=合計セル*24」と24を掛けて、表示形式を標準に戻します。エクセルの時刻は1日=1のシリアル値なので、24を掛けると時間単位の数値になります。
深夜時間(22時〜翌5時)を求める
午後10時から午前5時までの深夜の労働には、2割5分以上の割増賃金が必要です(労働基準法第37条第4項)。夜勤やシフト勤務がある職場では、H列に深夜時間を日ごとに出しておくと、割増の計算にそのまま使えます。H2セルに次のように入力します。
=MAX(0,MIN(D2+(D2<C2),1+TIME(5,0,0))-MAX(C2,TIME(22,0,0)))+MAX(0,MIN(D2+(D2<C2),TIME(5,0,0))-C2)
前半は「22時から翌朝5時まで」と勤務が重なる時間、後半は「5時より前に出勤した日の0時から5時まで」と重なる時間です。退勤が出勤より小さいとき(日をまたぐとき)は、退勤に1日を足して計算します。22:00出勤・翌7:00退勤なら「7:00」、4:00出勤・13:00退勤なら「1:00」になります。深夜帯に休憩を取る職場では、この結果から深夜帯の休憩時間を差し引きます。表示形式は「[h]:mm」、月合計はF列・G列と同じくSUMで出します。
毎月の運用のコツ
集計表は一度作れば、翌月はシートをコピーして日付と時刻を入れ替えるだけで使い回せます。運用を安定させるコツは3つです。
第一に、従業員ごとにシートを分け、ブックは月ごとに1つにします。1シートに全員を詰め込むと、行の挿入や削除で関数の参照が崩れやすくなります。第二に、関数が入ったセルには保護をかけ、入力するのは時刻の列だけにします。第三に、締めが終わったブックは「2026年7月_確定」のように名前を付けて保存し、後から書き換えないルールにします。タイムカードなどの労働時間の記録には保存義務があるため、保存期間のルールもあわせて確認してください。
つまずきやすいポイント
######と表示される。列幅が足りないか、時刻の計算結果がマイナスになっています。日またぎ勤務はsec3の式で対応してください。
合計が合わない。「1時間30分」を「1.3」と入力してしまう、60進法と10進法の混同が典型です。時刻は必ず「1:30」の形式で入力し、数値に直すときは24を掛ける方法に統一します。詳しい計算の考え方はタイムカードの計算方法で解説しています。
15分単位で丸めてよいか迷う。労働時間は1分単位の把握が原則で、日々の時刻を一律に切り捨てる運用には未払いリスクがあります。丸めのルールはタイムカードの丸め・切り捨ては違法?を確認してください。
エクセル集計の限界。転記と属人化への備え
ここまでの手順で計算は自動化できます。ただし、タイムカードに打刻・記入された時刻をエクセルに写す「転記」は手作業のまま残ります。30名のモデル試算では、転記(約10時間)と突き合わせ確認(約6時間)は、エクセルでもほぼそのまま残ります。時刻を1つ写し間違えるとその人の給与が変わるため、元のカードとの突き合わせも省けません。
もう1つの限界が属人化です。集計表は作った人に頼りがちで、丸めや休憩のルールが変わったときに、作った人以外は式を直せないことがよくあります。作った人が異動や退職でいなくなると、誤りに気づいても直せないまま使い続けることになります。次の3つを決めておくと、引き継ぎで困りにくくなります。
- 説明シートを同じブックに置く:各列の意味、式の意味(例:「F列=退勤−出勤−休憩」)、丸めや休憩のルールを書いておく
- ルールの値は1か所のセルにまとめる:式の中の「8:00」や深夜の開始時刻などを設定欄のセル(例: $K$1)に置き、式はそのセルを参照する。ルールが変わっても1か所直せば済む
- 式を変えたら日付と内容を残す:説明シートの末尾に「いつ・誰が・何を変えたか」を1行ずつ書く
転記そのものをなくす方法が、タイムカードをスマホで撮影してOCRで自動データ化する方式です。読み取った時刻をもとに実働・残業・深夜の時間を集計し、結果をエクセルに出力して給与計算に使えます。計算式をブックの中で守り続ける必要もなくなります。
パシャ勤怠でできること
パシャ勤怠は、紙のタイムカードをスマートフォンで撮影し、AI-OCR で勤怠データに変換するクラウド勤怠管理サービスです。今のタイムレコーダーと紙のタイムカードは、そのまま使えます。
読み取った結果は、目印の付いた行から先に確かめ、続けて元の画像と見比べていけば、紙から打ち直す手間をかけずに確認を終えられます。
集計結果は Excel でダウンロードでき、従業員ごとの月の合計は「サマリー」シートにあります。CSV でも出力できます。
料金は1人あたり月100円(税抜)で、初期費用はかかりません。
よくある質問
無料テンプレートを探すのと自作、どちらがよいですか?
どちらでも、計算式の中身が見えて自社に合わせて直せることが大切です。当社の勤怠集計エクセルテンプレートは計算式をすべて見える形にしており、休憩や夜勤の扱いを自社に合わせて調整できます。いずれの場合も、タイムカードからエクセルへ時刻を写す転記の工数は残ります。
休憩時間が日によって違う場合はどうすればよいですか?
休憩を固定値にせず、E列に日ごとの実績を入力する運用にしてください。実働時間の式(=D2-C2-E2)は変わりません。中抜けが複数回ある働き方の場合は、休憩列を2つに分けて式を「=D2-C2-E2-F2」のように拡張する方法もありますが、列が増えるほど入力ミスも増えるため、件数が多いならOCRデータ化などの自動化を検討する段階です。
深夜の時間もエクセルで集計できますか?
できます。H列に深夜時間の式(この記事の「深夜時間(22時〜翌5時)を求める」)を入れれば、日をまたぐ勤務も含めて、22時から翌5時までの時間を日ごとに出せます。深夜帯に休憩を取る場合は、その時間を差し引いてください。月合計はSUMで出し、表示形式を「[h]:mm」にします。
集計表を作った担当者が辞めることになりました。何を引き継げばよいですか?
各列に入っている式とその意味、丸め・休憩・深夜などのルールの値をどのセルで持っているか、過去にいつ式を変えたか、の3点を説明シートにまとめ、後任と一緒に1か月分を締めながら確かめるのが確実です。この3点がそろっていれば、ルールが変わったときに後任が式を直せます。
- 集計表は「日付・曜日・出勤・退勤・休憩・実働・残業」の7列で足りる
- 時刻はコロン区切りで入力し、合計セルの表示形式は「[h]:mm」にする
- 実働は =D2-C2-E2、残業は =MAX(0, F2-"8:00")、月合計はSUMで自動計算でき、夜勤がある職場は深夜時間の列を足す
- 計算は自動化できても、タイムカードからの時刻の転記は手作業のまま残る
- 説明シートとルールのセルを用意しておくと、作った人以外も式を直せる
パシャ勤怠は、紙のタイムカードをスマホで撮るだけで時刻の読み取りから集計までを自動化し、結果をエクセルに出力できるサービスです。集計表への転記をなくしたい方は、お問い合わせいただければ無料のお試し(登録した月の翌月末まで)でご確認いただけます。