休日に出勤してもらい、代わりに別の日を休みにする。よくある処理ですが、これを「振替休日」として扱うか「代休」として扱うかで、支払う金額が変わります。違いは、休日と労働日を入れ替えたタイミングだけです。

「総務の森」の相談の広場(労務管理)に2020年1月から2026年6月までに投稿された全6,082件を24の論点に分類したところ、振替休日・代休に関する相談は150件(2.5%)ありました。1件あたりの返信数は4.27件で、25件以上ある22論点の件数加重平均4.38件を下回ります。相談総数が減っている一方でこの論点の比率は上がっており、2020年前後の2.2%から直近は3.9%になっています。よく相談されるが、答えは定まる。そういう論点です。この記事では、振替と代休の使い分けと、そこで生まれる支払額の差に絞って説明します。

振替休日と代休は何が違うか

どちらも「休日に働いてもらい、代わりに別の日を休む」点は同じです。違うのは、休日と労働日を入れ替える手続きを労働の前にやるか、後にやるかです。

振替休日は、休日が来る前に「この休日を労働日にして、代わりにこの日を休日にする」と入れ替えておく方法です。入れ替えた結果、出勤する日は最初から労働日になります。労働日に働いたのですから、休日労働ではありません。

代休は、休日に働いてもらった後で、代わりの休みを与える方法です。働いた日は休日のままなので、休日労働が成立しています。後から休ませても、成立した休日労働がなかったことにはなりません。

労働基準法第35条第1項は「使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。」と定めています。同条第2項は「前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。」として、4週4日の例外を置いています。この条文が求める休日に働かせた場合、労働基準法第37条第1項によって割増賃金の支払いが必要になります。振替と代休の差は、この「休日に働かせた」という事実が成立するかどうかの差です。

比べる点振替休日代休
手続きのタイミング休日労働の前に、あらかじめ入れ替える休日労働をさせた後に、休みを与える
その日の法律上の扱い労働日になる(休日ではない)休日のまま(休日労働が成立する)
休日労働の割増(法定休日の場合)発生しない35%の割増賃金が必要
代わりの休みを与える義務あり(あらかじめ特定した日に休ませる)法律上の義務はない(会社が決める)
就業規則の定め振替を行う旨の定めが前提になる与えるなら取得ルールを定めておく
あわせて確認すること振替先が別の週なら、週40時間を超えないか代休を与えても割増の支払義務は消えない

表の4行目は誤解の多いところです。代休は法律上の制度ではなく、会社が任意で設ける仕組みです。労働基準法第37条第1項が会社に求めているのは割増賃金の支払いであって、代わりの休みを与えることではありません。代休を与えるかどうかは会社の判断で決められますが、割増賃金は判断の対象になりません。

支払額はいくら違うか

時給1,200円のパート従業員が、法定休日に8時間働いたケースで比べます。労働基準法第37条第1項は「二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。」と定めており、休日労働の率は35%、時間外労働の率は25%です。

処理のしかた計算式その日の支払額
振替休日(同じ週の中で振り替えた)1,200円 × 8時間9,600円
振替休日(翌週へ振り替え、出勤した週が48時間になった)1,200円 × 8時間 + 1,200円 × 25% × 8時間12,000円
代休(休日に働かせた後で休ませた)1,200円 × 1.35 × 8時間12,960円

同じ「休日に8時間働いて、代わりに1日休む」でも、同じ週の中で振り替えた場合と代休で処理した場合では3,360円の差が出ます。この3,360円は、1,200円 × 35% × 8時間で計算される休日労働の割増分です。

代わりに休んだ日の賃金は、どちらのケースでも発生しません。時給制なら働いていない日に賃金は出ませんし、月給制で「代休を取った日は控除する」と就業規則に定めている場合も、控除されるのは通常の賃金部分だけです。代休で相殺できるのは通常の賃金部分であって、割増の35%分は残ります。

10人が月に1回ずつ休日出勤する職場なら、この差だけで月33,600円、年間で403,200円になります。ただし本当に注意すべきは金額の大きさではなく、差の向きです。実態は代休なのに振替休日として処理していると、35%分が支払われていない状態のまま毎月積み上がります。

割増率の重ね合わせや端数の扱いなど、割増賃金の計算手順そのものは割増賃金の計算方法を4ステップで解説にまとめています。

振替を有効にする3つの条件

振替休日として処理するには、次の3つがそろっている必要があります。1つでも欠けていれば実態は代休であり、法定休日の労働なら35%の割増賃金が必要です。

1. 就業規則に振替の定めがある

休日と労働日を入れ替えるのは、決まっていた労働条件を組み替える行為です。就業規則に「業務の都合により、あらかじめ休日を他の労働日と振り替えることがある」といった定めがあることが前提になります。定めがない状態で休日に出勤してもらった場合は、休日労働として処理します。

就業規則そのものがない場合は、先に作成の要否を確認してください。判断の基準は就業規則はいつから義務?従業員10人の壁で整理しています。

2. 労働の前に、振替先の日を特定して本人に伝える

「あとで休んでいいから」では振替になりません。休日が来る前に、どの日を代わりの休日にするかを日付で決めて、本人に伝えることが必要です。伝えた日付と振替先の日付の両方を記録に残してください。

何日前までに伝えるかは、法律に期限の定めがありません。就業規則で「振替は前日までに通知する」のように自社の期限を決めておくと、現場ごとに判断が割れなくなります。

3. 振り替えた結果、週40時間を超えないか確認する

労働基準法第32条第1項は「使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。」と定めています。振替先を別の週に置くと、出勤した週の労働時間がその分だけ増えます。40時間を超えた部分には、時間外労働の割増(25%)が必要です。

あわせて、週の起算日を就業規則で定めてください。定めていない会社は、起算日を決めるところから始めます。起算日が決まっていないと、どの労働時間をどの週に足すかが確定せず、40時間を超えたかどうかも判定できません。

手順としては、次の順番で確認すると漏れません。

  1. 出勤してもらう休日が、法定休日か所定休日かを確認する
  2. 振替先の日付を決めて、本人に伝え、記録に残す
  3. 振替先を含めて、出勤する週の労働時間を合計する
  4. 40時間を超えるなら、超過分の25%を給与計算に反映する

よくある失敗と、その直し方

持ち込まれる相談は、原因のパターンがほぼ決まっています。自社に当てはまるものがないか確認してください。

よくあるミスなぜ起きるか対策
休ませた後で「振替扱い」にする現場は「代わりに休ませた=振替」と理解しており、事前か事後かの区別が言葉に表れていない出勤を依頼する時点で振替先の日を決めて記録に残す。決められないなら代休として35%の割増を支払う
振替先を翌週にして、週40時間を見落とす振替を1日単位で考えており、週単位の労働時間を計算し直していない振替先を決めた時点で、出勤する週の合計労働時間を再計算する。40時間超の部分に25%を付ける
所定休日を振り替えたのに35%を払う就業規則で法定休日の曜日を特定しておらず、休日出勤をすべて同じ扱いにしている就業規則で法定休日を曜日で特定する。勤怠の記録上も法定休日と所定休日を区別する
代休を与えたので割増を払わない「代わりに休ませたから精算済み」という感覚。代休で相殺できるのが通常の賃金部分だけだと認識されていない休日労働の日に35%の割増を計算する。代休の取得は、それとは別の処理として記録する
振替先が翌月にずれて、締め日に間に合わない振替先の日付を決めるときに、賃金計算期間の締め日を見ていない振替先は同じ賃金計算期間の中に置くルールにする。またぐ場合は当月を休日労働として集計し、翌月に調整する
本人への通知が口頭だけで残っていない小さい職場ほど口頭で完結し、いつ伝えたかを書き留める習慣がない依頼した日、振替先の日、本人が了解した日を1行で残す。書式は問わないので、後から日付が読み取れる形にする

判断に迷う6つの場面

休日の当日に「今日出て、来週休んで」と言ってよいか

その日は代休として処理してください。振替は休日が来る前に労働日へ入れ替える手続きなので、その休日が始まってから伝えても入れ替えは成立しません。法定休日であれば、35%の割増賃金が必要です。

当日の依頼が続く職場は、就業規則で通知の期限を決めて、期限に間に合わないものは代休として処理すると運用を固定してください。都度判断にすると、担当者ごとに答えが変わります。

振替先を翌週にしたら、週40時間はどうなるか

出勤した週が40時間を超えるなら、超えた分に25%の割増賃金が必要です。月曜から金曜まで8時間ずつ働く人が日曜に8時間出勤し、振替先を翌週の水曜にした場合、出勤した週は48時間になります。時給1,200円なら、超過8時間分について1,200円 × 25% × 8時間 = 2,400円の割増が発生します。

翌週が32時間になっても相殺されません。労働基準法第32条第1項は1週間ごとに40時間を判定するので、足りない週と超えた週を通算する扱いにはなりません。振替先を同じ週の中に置けば、この追加は発生しません。

法定休日と所定休日のどちらを振り替えたのか分からない

就業規則で法定休日を曜日で特定してください。特定していれば、振り替えたのが法定休日か所定休日かは、記録を見るだけで判別できます。特定がないと、毎月の集計のたびに暦を見て「その週に休日が1日確保されていたか」を確認する作業が発生します。

週休2日の会社で片方だけ出勤した場合は、もう1日の休みが残っているので休日は確保されています。この判断を毎月手作業でやるか、就業規則の1行で終わらせるかの違いです。区別そのものは法定休日と所定休日の違いとは?割増率35%と25%の分かれ目で説明しています。

振替も代休も就業規則に書かれていない

その場合、休日に働いてもらった分はすべて休日労働として処理します。振替は就業規則の定めを前提とする手続きなので、定めがない状態では入れ替えが成立しません。法定休日の労働であれば、35%の割増賃金を支払います。

就業規則を改定するまでの間も、休日労働そのものは行えます。ただし休日労働をさせるには36協定が必要で、その上限の考え方は休日出勤は何時間まで?労基法に上限規定はなく、決めるのは36協定にまとめています。

代休に期限を付けてよいか

付けられます。代休を与えること自体が法律上の義務ではないので、「休日労働の翌月末まで」のように取得期限を就業規則で定めることができます。期限の長さに法律上の制限はありません。

ただし、期限を過ぎて代休が取れなくなっても、35%の割増賃金を支払う義務は残ります。期限で消えるのは代わりの休みであって、割増ではありません。この2つを分けて考えると、期限の設定で迷わなくなります。

代休を取らないまま退職した

休日労働の割増賃金をすでに支払っていれば、退職時に追加で支払うものはありません。代休は通常の賃金部分を後から相殺する仕組みなので、取得しなければ相殺の機会がなくなるだけです。

逆に、割増賃金を支払わないまま代休も取っていない場合は、退職時に35%分を精算します。退職者が出た月は、休日労働の記録と代休の取得記録を突き合わせて、支払い漏れがないかを確認してください。

記録に残すことと、社労士に相談すること

振替と代休の処理は、判断そのものより記録で決まります。あとから「あれは振替だった」と説明しても、労働の前に振替先を特定した記録がなければ、振替として扱う根拠がないからです。休日出勤が発生したら、次の3つを残してください。

  1. その日が法定休日か、所定休日か
  2. 振替か代休か(=振替先を決めたのが労働の前か、後か)
  3. 振替先または代休の取得日と、本人に伝えた日付

この3つがそろっていれば、給与計算の担当者は35%を付けるかどうかを迷わずに決められます。そろっていないと、毎月の締めのたびに現場へ確認する電話が発生します。

仕組みで解決できる範囲

勤怠の仕組みで解決できるのは、事実の記録と集計です。誰がいつ何時間働いたかを日付つきで残す、休日に出勤した日を月次で拾い出す、週ごとの労働時間を合計して40時間を超えた週を見つける。ここまでは手順が決まっている作業なので、毎月人が思い出しながらやり直す必要はありません。

社労士に相談する領域

一方で、就業規則に振替の条項をどう書くか、シフト制で週の起算日をどう設計するか、過去にさかのぼって処理を直す場合にどこまで精算するかは、会社ごとの実態を見て決める判断です。ここは社会保険労務士の領域になります。社労士事務所を探すから、対応分野や地域で絞り込んで相談先を探せます。

よくある質問

代休は必ず与えないといけませんか。

法律上の義務ではありません。労働基準法第37条第1項が会社に求めているのは、休日労働に対する割増賃金の支払いです。代休を与えるかどうか、与えるならどの期間内に取らせるかは、会社が就業規則で決めます。

振替休日として特定した日に、結局出勤させてしまいました。

その日は労働日として働いたことになるので、代わりの休日が確保されていない状態です。労働基準法第35条第1項は毎週少なくとも1回の休日を求めているため、その週に休日が1日も残っていなければ、その日の労働は休日労働として扱い、法定休日なら35%の割増賃金を支払います。別の日をあらためて休日として特定できるかを、その週のうちに確認してください。

所定休日(法定休日以外の休み)に出勤した場合も35%ですか。

35%ではありません。所定休日の労働には休日労働の割増(35%)はかからず、その週の労働時間が40時間を超えた分に時間外労働の割増(25%)がかかります。どちらの休日かで支払額が変わるので、就業規則で法定休日を曜日で特定しておくことが前提になります。

月給制の場合、振替休日を取った日の賃金はどうなりますか。

同じ月の中で振り替えたなら、月の賃金は変わりません。休日だった日が労働日になり、労働日だった日が休日になるだけで、その月の労働日数の合計は同じだからです。ただし振替先が別の週で、出勤した週が40時間を超えた場合は、超過分の25%が上乗せになります。

休日出勤した月と、振替休日を取る月が違う場合の給与計算はどうしますか。

給与計算は締め日ごとに確定させます。休日出勤した月の締めの時点で振替が成立していなければ、その月は休日労働として集計し、翌月に振替が成立した段階で調整します。この調整を避けたい場合は、振替先を同じ賃金計算期間の中に置くルールを就業規則で定めてください。

この記事のまとめ
  • 振替休日は休日労働の前に休日と労働日を入れ替える手続き。入れ替えた日は労働日になるので、休日労働の割増(35%)は発生しない
  • 代休は休日労働の後で代わりの休みを与える扱い。休日労働は成立済みなので、法定休日であれば35%の割増賃金を支払う義務が残る
  • 時給1,200円の人が法定休日に8時間働いた場合、同じ週で振り替えれば9,600円、代休なら12,960円。差額3,360円は割増分そのもの
  • 振替が成立するのは、就業規則に振替の定めがあり、労働の前に振替先の日を特定して本人に伝えている場合
  • 振替先を別の週に置くと出勤した週が40時間を超えることがあり、超過分には時間外労働の割増(25%)が必要(労働基準法第32条第1項)
  • 記録として残すのは「法定休日か所定休日か」「振替か代休か」「振替先の日と本人に伝えた日」の3つ

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