夜勤の勤怠でつまずく原因は、ほとんどが日付です。20:00に始まって翌5:00に終わる勤務は、出勤簿の上では2日にまたがりますが、労働時間の数え方は1日分です。ここを取り違えると、8時間を超えたかどうかの判定が変わり、時間外の割増賃金が消えたり二重に付いたりします。

総務の森「相談の広場(労務管理)」に2020年1月から2026年6月までに投稿された6,082件を分類すると、「夜勤・日跨ぎ・深夜」は197件(3.2%)で、勤怠に関する24論点の中で上位に入ります。1件あたりの返信数は4.27件で、25件以上の相談がある22論点の件数加重平均4.38件を下回ります。よく相談されるが、答えは比較的すぐ定まる論点です。この記事では、何日目に数えるか、深夜帯をどう切り出すか、割増が重なるとどうなるかを、時刻と分数で示します。

日をまたぐ勤務は何日目に数えるか

結論から書きます。継続した勤務が2暦日にわたるときは、始業時刻の属する日の労働として通算し、全体を1日の労働時間として扱います。翌日の勤務としては数えません。これは行政解釈として確立している扱いで、夜勤の集計はここが出発点になります。

具体例で確かめます。20:00始業、翌5:00終業、休憩60分(翌1:00から2:00)の勤務です。拘束は9時間、そこから休憩60分を引いて実働8時間です。この8時間はすべて始業日の労働で、翌日の労働時間は0時間として扱います。

1日の上限は労働基準法第32条第2項に定めがあります。「使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。」この8時間を超えたかどうかも、始業日に通算した実働で判定します。

もう1例、時間外が出るケースです。20:00始業、翌7:00終業、休憩60分(翌1:00から2:00)なら、拘束11時間、実働10時間です。20:00から翌1:00までで5時間、2:00から5:00までで3時間、合計8時間に達するのが翌5:00の時点です。したがって5:00から7:00までの2時間が法定時間外労働になります。

ここで0時にリセットして「前日は4時間、当日は6時間」と分けてしまうと、どちらの日も8時間以内に見えて時間外が消えます。夜勤の集計で最も損害が出る間違いがこれです。

週の上限も同じ考え方で通算します。労働基準法第32条第1項は「使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。」と定めており、日をまたぐ勤務は始業日が属する週に入れて数えます。8時間・週40時間の基本は法定労働時間とは?8時間・週40時間の境界線で整理しています。

紙のタイムカードでは、翌5:00の退勤を29:00のように24時を超える表記で書くか、「翌」の印を付ける運用にすると、1つの勤務が1行に収まります。行が2つに割れた時点で、始業日への通算はほぼ確実に崩れます。

深夜割増の範囲と率。22時から翌5時をどう切り出すか

深夜労働の割増は労働基準法第37条第4項に定めがあります。「使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。」

つまり22時から翌5時までに実際に働いた時間に、2割5分以上の割増が付きます。厚生労働大臣が地域や期間を定めた場合は23時から翌6時になりますが、実務ではまず22時から翌5時で計算します。

重要なのは、深夜割増は労働時間の帰属日とは無関係だという点です。始業日が前日であっても、翌日の0:00から5:00に働いた時間は深夜労働として数えます。「始業日に通算する」のは1日の労働時間の数え方、「22時から5時」は割増の対象時間帯の話で、2つは別の物差しです。

先ほどの勤務(20:00始業、翌5:00終業、休憩60分を翌1:00から2:00に取得)で切り出してみます。深夜帯にかかるのは22:00以降の労働で、休憩で抜けた時間は含めません。

時間帯状態深夜労働として数える時間
20:00から22:00労働(深夜帯の前)0分
22:00から24:00労働2時間
0:00から1:00労働1時間
1:00から2:00休憩0分
2:00から5:00労働3時間
合計実働8時間深夜労働6時間

この勤務は実働8時間で法定8時間を超えないため、時間外の割増は発生しません。深夜労働6時間分だけに2割5分以上の割増が乗ります。休憩を深夜帯の中で取っているため、深夜帯7時間のうち1時間が抜けて6時間になっている点も確認してください。

実働時間と深夜時間の求め方そのものはタイムカードの計算方法。実働時間・残業・深夜の求め方にまとめています。

割増が重なるとき。時間外+深夜、法定休日+深夜

結論を先に書きます。深夜割増は他の割増と重なります。どちらか一方を選ぶのではなく、率を足して計算します。

時間外労働の割増は労働基準法第37条第1項が根拠で、「通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。」と定められています。法定時間外労働は2割5分以上、法定休日労働は3割5分以上が政令で定められた率です。

状況割増率内訳
法定8時間以内の労働が深夜帯にかかる2割5分以上深夜のみ
法定時間外労働が深夜帯にかかる5割以上時間外2割5分以上+深夜2割5分以上
法定休日の労働が深夜帯にかかる6割以上休日3割5分以上+深夜2割5分以上
法定休日の労働が8時間を超えた3割5分以上のまま法定休日の労働に時間外の割増は重ねません

数字で確かめます。9:00始業、23:00終業、休憩60分(12:00から13:00)の勤務です。実働は13時間で、法定8時間に達するのは18:00の時点です。したがって18:00から23:00までの5時間が法定時間外労働になります。

このうち22:00から23:00までの1時間は、時間外かつ深夜なので5割以上です。18:00から22:00までの4時間は時間外のみで2割5分以上になります。同じ「残業5時間」でも、22時をまたいだ分は率が変わります。

基礎となる時給単価の出し方や端数処理は割増賃金の計算方法を4ステップで解説を、法定休日と所定休日の見分け方は法定休日と所定休日の違いとは?割増率35%と25%の分かれ目を参照してください。本記事では、どの時間がどの箱に入るかの切り出しに絞ります。

夜勤の集計でよくある失敗

紙のタイムカードから夜勤を集計するときに、実際に起きやすい間違いを並べます。原因はほぼすべて「1つの勤務が2つの日付に割れること」に行き着きます。

よくあるミスなぜ起きるか対策
日をまたいだ分を翌日の労働として付けるタイムカードも出勤簿も日付ごとの行になっており、退勤の日付が翌日になるため始業日の1行にまとめる。退勤欄は29:00のように24時を超える表記で書く
8時間の判定を0時でリセットする日付が変われば別の日の労働だと考えてしまうため始業日に通算した実働で判定する。20:00から翌7:00・休憩60分なら実働10時間で時間外2時間
深夜時間の切り出しが漏れる22時と5時で線を引く作業が手計算では手間になり、後回しになるため22:00と5:00で必ず区切り、深夜帯にかかった休憩を引いてから合計する
休憩を深夜帯から引かない、または実働から二重に引く「休憩60分」とだけ書き、開始と終了の時刻を記録していないため休憩の開始時刻と終了時刻を記録する。深夜帯にかかったかどうかが判定できるようになる
深夜と時間外のどちらか一方しか付けない割増を「区分の選択」だと考えてしまうため重なる時間は率を足す。時間外かつ深夜は5割以上、法定休日かつ深夜は6割以上
月末をまたぐ勤務が締めから漏れる、または前月と当月に二重計上される締め日で日付を切ると、1つの勤務が2つの期間に分かれるため始業日の属する月に勤務全体を入れる。給与ソフトへの取り込み基準も始業日にそろえる

このうち賃金の未払いに直結するのは、2番目の8時間判定と3番目の深夜切り出しです。どちらも1回の勤務あたり1時間から2時間の差が出るため、夜勤者が5人いれば月で数十時間の差になります。

夜勤の迷いどころ

仮眠時間は労働時間に入りますか

仮眠中に警報や電話への対応が求められ、持ち場を離れられない場合は、労働時間として扱います。実際に呼び出しが発生しなかった時間も含めて数えます。判断の分かれ目は、仮眠中に対応する義務があるかどうかです。

逆に、事業場から離れることが自由で呼び出しもない完全な休憩であれば、労働時間には入りません。仮眠を労働時間として扱う場合、その時間が22時から翌5時にかかっていれば深夜割増の対象にもなります。

夜勤が連続する交替制はどう数えますか

1つの勤務が2つの日に割れることはありません。それぞれの勤務を、その勤務の始業日に付けます。

たとえば1日20:00に始まり2日5:00に終わる勤務と、2日20:00に始まり3日5:00に終わる勤務がある場合、1日分の労働時間は9時間の拘束から休憩を引いた実働、2日分も同様で、両者は混ざりません。1つの日に2つの勤務が乗ることはあっても、1つの勤務が2つの日に割れることはない、と覚えると整理できます。

法定休日をまたいだときは、どこから休日労働ですか

休日は暦日(0:00から24:00)で判定します。日曜が法定休日の会社で、土曜22:00始業・日曜5:00終業の勤務なら、法定休日労働になるのは日曜0:00から5:00までの5時間です。土曜22:00から24:00までの2時間は法定休日労働ではありません。

逆に日曜22:00始業・月曜5:00終業なら、法定休日労働は日曜24:00までの2時間で、月曜0:00以降は通常の労働です。一方で1日8時間の判定は始業日に通算するため、労働時間の帰属は始業日、休日割増の判定は暦日という二重の物差しで見ることになります。

月末や締め日をまたぐ勤務は、どちらの月ですか

始業日の属する月に、勤務全体を入れます。20日締めの会社で20日20:00始業・21日5:00終業なら、実働のすべてが当月分です。

この扱いにそろえておくと、1日8時間の判定(始業日に通算)と締め期間の区切りが一致するため、月をまたぐ勤務でも時間外の計算がずれません。締め日で機械的に0時で切ると、1つの勤務が2つの月に分かれて8時間判定が崩れます。

16時間夜勤の休憩はどこに置きますか

休憩を置く時刻によって、深夜労働の時間数が変わります。17:00始業・翌9:00終業・休憩120分の勤務で比べます。拘束16時間、実働14時間はどちらも同じですが、深夜労働は次のように変わります。

  • 休憩を翌1:00から3:00に置いた場合。深夜帯7時間から休憩2時間を引いて、深夜労働は5時間
  • 休憩を19:00から20:00と、翌6:00から7:00に分けた場合。深夜帯にかからないため、深夜労働は7時間

差は2時間分の深夜割増です。どちらの置き方も可能ですが、実際に取った休憩の開始時刻と終了時刻を記録していなければ、深夜労働の時間数は確定しません。16時間を超える長時間の夜勤ほど、休憩の記録が金額に直結します。

夜勤の記録と集計をどう回すか

ここまでの内容は、次の3手順に固定できます。手順が決まっていれば、担当者が代わっても結果は変わりません。

  1. 1つの勤務を始業日の1行にまとめる。退勤が翌日なら29:00のように24時を超える表記で書く
  2. 休憩の開始時刻と終了時刻を記録する。合計分数だけでは深夜労働が確定しない
  3. 22:00と5:00で線を引いて深夜労働の分数を出し、実働から法定8時間を超えた分を時間外として切り出す

この3手順は、判断ではなく作業です。転記、時刻の区切り、分数の合計、締め期間への振り分けは、ルールが決まっているため仕組みで自動化できます。夜勤の計算が合わない原因の大半は難しい法解釈ではなく、この作業量の多さと転記ミスにあります。

一方で、仕組みでは決められない領域もあります。就業規則で法定休日をどの曜日にするか、自社の仮眠時間を労働時間として扱うか、夜勤手当や交替勤務手当をどう設計するか、交替制勤務の労使協定をどう組むか。ここは自社の勤務実態に合わせた個別判断になるため、社労士に相談する領域です。社労士事務所を探すから、勤怠・給与計算に対応する事務所を地域で探せます。

よくある質問

夜勤の労働時間は、出勤した日と退勤した日のどちらに付けますか。

始業時刻の属する日に付けます。20:00始業・翌5:00終業・休憩60分なら、実働8時間はすべて始業日の労働時間で、翌日の労働時間は0時間です。1日8時間を超えたかどうかの判定も、始業日に通算した実働で行います。

20時から翌5時まで働いたとき、深夜労働は何時間になりますか。

休憩をどこで取ったかで変わります。深夜帯は22:00から翌5:00までの7時間なので、休憩60分を翌1:00から2:00に取った場合は、7時間から1時間を引いて深夜労働は6時間です。休憩を21:00から22:00に取っていれば、深夜労働は7時間になります。

時間外労働と深夜労働が重なった場合、割増率はどうなりますか。

時間外の2割5分以上と深夜の2割5分以上を足して、5割以上になります。法定休日の労働が深夜帯にかかった場合は、休日の3割5分以上と深夜の2割5分以上で6割以上です。単価の出し方は割増賃金の計算方法を4ステップで解説を参照してください。

仮眠時間は労働時間として数えますか。

仮眠中に警報や電話への対応が求められ、持ち場を離れられない場合は労働時間として扱い、実際に呼び出しがなかった時間も含めて数えます。対応の義務がなく自由に過ごせる時間であれば、労働時間には入りません。労働時間として扱う仮眠が22時から翌5時にかかっていれば、深夜割増の対象になります。

月末をまたぐ夜勤は、どちらの月の勤怠になりますか。

始業日の属する月に、勤務全体を入れます。月末31日20:00始業・翌1日5:00終業なら、実働のすべてが当月分です。締め日で0時に切ると1つの勤務が2つの月に分かれ、1日8時間の判定が崩れます。

この記事のまとめ
  • 継続した勤務が2暦日にわたるときは、始業時刻の属する日の労働として通算し、全体を1日の労働時間として扱う。翌日の勤務としては数えない
  • 1日8時間・週40時間(労働基準法第32条第2項・第1項)の判定も、始業日に通算した実働で行う。0時でリセットすると時間外が消える
  • 深夜割増は22時から翌5時に実際に働いた時間が対象で2割5分以上(労働基準法第37条第4項)。深夜帯に取った休憩は深夜労働に入らない
  • 20:00始業・翌5:00終業・休憩60分(翌1:00から2:00)なら、実働8時間・深夜労働6時間・時間外なし
  • 割増は重なる。時間外かつ深夜は5割以上、法定休日かつ深夜は6割以上。法定休日の労働は8時間を超えても3割5分以上のまま
  • 休憩の開始時刻と終了時刻を記録しないと深夜労働の分数が確定しない。締め期間への振り分けも始業日基準にそろえる

パシャ勤怠は、紙のタイムカードを撮影するだけで、日をまたぐ勤務を始業日の1行にまとめ、深夜と時間外を区分して集計します。タイムシートの様式や打刻方法を変えずに、転記と区分の作業だけをなくす使い方ができます。夜勤のカードでどう読み取れるか確かめたい場合は、お問い合わせください。