勤怠管理について調べると、たくさんの「勤怠管理システム」が出てきます。そのため、勤怠管理=新しいシステムを導入すること、と思ってしまいがちです。でも、本来はそうではありません。

紙のタイムカードでも、Excelでも、ICカードでも、クラウドシステムでも構いません。大切なのは、誰が、いつ働き、いつ休み、どれだけ時間外労働をしたのかを正しく把握できること。そして、その記録を給与計算や労務管理につなげられることです。

会社によって働き方は違います。従業員10人の工場と、100人のIT企業では、必要な勤怠管理も違います。この記事では、「どの勤怠管理システムがおすすめか」から考えるのではなく、そもそも自社には、どんな勤怠管理が必要なのか、というところから整理していきます。

勤怠管理とは

勤怠管理とは、従業員の出勤・退勤・休憩・休日・時間外労働などを把握し、働いた時間を適切に管理することです。一般的には、次の項目を管理します。

  • 出勤時刻
  • 退勤時刻
  • 休憩時間
  • 労働時間
  • 時間外労働
  • 深夜労働
  • 休日労働
  • 欠勤・遅刻・早退
  • 年次有給休暇

ここで重要なのは、「打刻すること」と「勤怠管理すること」は同じではない、という点です。

例えば、タイムカードに8時32分と17時48分という記録が残っていても、それだけでは給与計算は終わりません。会社の就業時間が9時から17時30分なら、次のことを判定する必要があります。

  • 実際の労働時間はいくつか
  • 休憩時間は何分か
  • 残業時間はいくつか
  • 深夜労働は発生しているか
  • 休日出勤なのか

つまり勤怠管理は、記録する → 確認する → 計算する → 給与計算等に利用する、ところまで含めた業務です。

なぜ会社は勤怠管理をする必要があるのか

勤怠管理には、大きく3つの目的があります。

1. 給与を正しく計算するため

時給制の従業員はもちろん、月給制でも残業、深夜労働、休日労働などによって給与額が変わります。その基礎になるのが勤怠データです。勤怠記録が間違っていれば、その後の給与計算も間違います。

給与計算を社労士や給与計算会社に依頼している場合でも、会社側から正確な勤怠情報を渡す必要があります。

2. 労働時間を把握するため

厚生労働省のガイドラインでは、使用者は労働者の日ごとの始業・終業時刻を確認し、記録することとされています。原則的な方法として、次の2つが示されています。

  • 使用者が自ら確認する
  • タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間など客観的な記録を基礎に確認する

つまり、「本人がだいたい8時間働いたと言っているから8時間」という管理ではなく、実際の働き方を確認できる記録が重要になります。

3. 働きすぎを把握するため

労働基準法では、原則として法定労働時間は1日8時間、1週40時間です。これを超えて時間外労働をさせる場合には36協定などの対応が必要で、時間外労働にも原則として月45時間・年360時間という上限があります。

勤怠管理は単に給与を計算するためだけではありません。会社が従業員の働きすぎに気付くための仕組みでもあります。

勤怠管理にはどんな方法がある?

勤怠管理の方法は、大きく分けると次のようになります。

1. 紙の出勤簿

従業員が出勤・退勤時刻を手書きする方法です。導入費用がほとんどかからず、特別な機械も必要ありません。一方で人数が増えると、集計、転記、計算、記入漏れの確認などの負担が大きくなります。

2. タイムカード

タイムレコーダーへカードを差し込み、出勤・退勤時刻を記録する方法です。長く使われている方法なので、従業員側の操作が非常に簡単です。「出勤したらカードを押す」という運用が既に定着している会社も多くあります。

問題は月末です。紙に残った時刻を、Excelへ転記する、電卓で計算する、残業時間を算出する、といった作業が発生します。つまり、打刻は簡単なのに、集計が大変、というのが紙のタイムカードの特徴です。

関連記事: タイムカードの集計方法4種類を比較

3. Excel

従業員や管理者がExcelへ勤務時間を入力する方法です。少人数であれば低コストで始められます。会社独自の計算式を組めることもメリットです。

一方で、数式を壊してしまう、ファイルが複数できる、誰が修正したかわからない、毎月同じ転記作業が発生する、といった問題も起こります。従業員が増えるほど管理は難しくなります。

関連記事: タイムカードのエクセル集計を自動化する方法と限界

4. クラウド勤怠管理システム

パソコンやスマートフォン、タブレットなどから出退勤を記録し、クラウド上で勤怠データを管理する方法です。集計を自動化しやすく、有給管理、シフト、給与計算連携、申請・承認、アラートなど、多くの機能を利用できます。従業員数が多い会社や、勤務形態が複雑な会社では非常に便利です。

ただし、高機能だから自社に合うとは限りません。従業員全員に新しい打刻方法を覚えてもらったり、初期設定や運用ルールを決めたりする必要があります。

5. 紙+データ化

もう一つ方法があります。現場ではタイムカードをそのまま使い、月末の集計だけデジタル化する方法です。従業員側の運用を変えずに、「管理者がやっている集計作業だけを減らす」という考え方です。全部をデジタル化するのではなく、面倒なところだけデジタル化する方法ともいえます。

紙のタイムカードは古いのか

紙を使っているという理由だけで、勤怠管理が遅れているとは限りません。例えば、次のような会社なら、タイムカードは非常に簡単な打刻方法です。

  • 全員同じ場所へ出勤する
  • 勤務時間がほぼ固定されている
  • 従業員がタイムカードに慣れている
  • 現場にパソコンを置きたくない
  • スマートフォンを業務利用させていない

1回の打刻に説明書はいりません。機械にカードを入れるだけです。

問題になるのは、紙を使っていることではなく、紙に記録された情報を人間が毎月集計していることです。ここは分けて考えた方がいいでしょう。

会社に合う勤怠管理は、働き方によって違う

では、何を使えばいいのでしょうか。ポイントは「一番高機能なシステム」を探すことではありません。次の順番で考えると整理しやすくなります。

まず勤務形態を見る

勤務時間がほぼ固定。9時出勤、18時退勤のような働き方であれば、勤怠管理は比較的シンプルです。タイムカードやシンプルなクラウドシステムでも管理できます。

シフト勤務。日によって勤務予定時間が違う場合は、シフトと実績を比較できる仕組みがあると便利です。

フレックスタイム制。清算期間を通した労働時間管理が必要になるため、それに対応したシステムを検討する必要があります。

複雑な変形労働時間制。単純な「出勤-退勤」だけでは判断できない場合があります。勤務制度に対応した勤怠管理システムを選ぶ必要があります。

勤怠管理システムを選ぶ前に確認したい5つのこと

1. 今、何に時間がかかっているか

打刻でしょうか。集計でしょうか。修正でしょうか。給与ソフトへの入力でしょうか。問題の場所によって、必要なシステムは変わります。

2. 従業員側の運用を変える必要があるか

新しいシステムを導入すると、新しい打刻方法、ログイン方法、パスワード管理、修正申請など、新しいルールが増えることがあります。管理者の仕事が楽になっても、従業員100人の作業が毎日増えれば、会社全体では必ずしも効率化とはいえません。

3. 本当に必要な機能は何か

勤怠管理システムには非常に多くの機能があります。しかし、「機能がある」ことと、「その会社が使う」ことは別です。シフト作成をしない会社に、高度なシフト機能は必要ありません。給与計算を社労士へ依頼している会社なら、給与計算機能そのものが不要な場合もあります。

4. 月額料金だけで判断しない

例えば1人300円のシステムでも、設定や運用に毎月何時間もかかれば、それもコストです。逆に少し料金が高くても、数時間の作業が消えるのであれば安い可能性があります。見るべきなのは、システム料金ではなく、勤怠管理に会社全体で使っているコストです。

5. 今の運用で残したいものを決める

勤怠管理を改善するとき、「全部変えなければいけない」と考える必要はありません。今の運用で問題のない部分は残しても構いません。例えば、タイムカードは使いやすい。でも月末の集計だけやめたい。これも立派な改善です。

勤怠管理で最低限知っておきたい法律

細かなルールは勤務制度によって変わりますが、まず押さえておきたい基本があります。

法定労働時間(労働基準法第32条)

原則として、1日8時間、1週40時間です。

休憩時間(労働基準法第34条)

1日の労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも60分の休憩が必要です。

時間外労働(労働基準法第36条)

法定労働時間を超えて働かせる場合には、原則として36協定の締結・届出などが必要です。時間外労働の上限は原則、月45時間・年360時間です。

勤怠に関する記録の保存(労働基準法第109条)

労働基準法上、労働者名簿、賃金台帳その他の労働関係に関する重要な書類の保存期間は5年とされています。ただし、経過措置として当分の間は3年とされています(労働基準法附則第143条)。勤怠データは「集計したら終わり」ではなく、後から確認できる形で残しておくことも重要です。

※ 個別の運用は所轄の労働基準監督署または社会保険労務士にご確認ください。

「勤怠管理をDXする」こと自体を目的にしない

勤怠管理を改善しようとすると、「紙をなくそう」「クラウドにしよう」「全部自動化しよう」という話になりがちです。でも、本来の目的はデジタル化ではありません。

例えば毎月、次の仕事をしているとします。

  1. タイムカードを回収する
  2. Excelへ転記する
  3. 電卓で残業を計算する
  4. 入力を確認する
  5. 社労士へ送る

この場合、なくしたいのはタイムカードではなく、2・3・4の作業かもしれません。そこだけ自動化すれば、現場の運用を変えなくても大きく負担を減らせます。

パシャ勤怠は「タイムカードを残す」という選択肢

パシャ勤怠は、紙のタイムカードをスマートフォンで撮影し、OCRとAIでデータ化・集計するクラウド勤怠サービスです。従業員は今まで通りタイムカードを使います。変えるのは、月末の管理作業です。

タイムカードを撮影すると、撮影 → 読み取り → 集計 → Excel・CSV出力、までを行えます。つまり、紙をやめるための勤怠管理システムではなく、紙を残したまま、面倒な集計を減らす勤怠管理システムです。

もちろん、すべての会社に向いているわけではありません。複雑な勤務制度や高度なシフト管理が必要なら、それに対応した勤怠管理システムを選ぶ方が合理的です。一方、次のような会社なら、「全部変えない」という方法もあります。

  • 今のタイムカードに不満はない
  • 月末の集計だけ大変
  • 従業員の操作を変えたくない
  • 大がかりなシステム導入はしたくない

勤怠管理は「何を導入するか」より「何を楽にしたいか」

勤怠管理には正解が一つだけあるわけではありません。紙でも、Excelでも、クラウドでも構いません。大事なのは、正しく記録できること。必要な計算ができること。管理する人の負担が大きすぎないこと。です。

まず、自社の勤怠管理で、一番面倒なのは何か、を考えてみてください。打刻なら、打刻方法を変える。集計なら、集計を変える。シフトなら、シフト管理を変える。給与連携なら、データ連携を変える。全部を一度に変える必要はありません。勤怠管理は、会社の働き方に合わせて選べばいいのです。

この記事のまとめ
  • 勤怠管理は「打刻」ではなく、記録・確認・計算・給与計算への利用までを含む業務
  • 紙・Excel・クラウドのどれでもよく、正しく記録でき、必要な計算ができ、管理者の負担が大きすぎないことが条件
  • 選ぶ前に、今どこに時間がかかっているか、従業員側の運用を変える必要があるか、本当に必要な機能は何かを確認する
  • 法定労働時間は1日8時間・週40時間。休憩・36協定・記録の保存の基本を押さえる
  • 全部を一度に変える必要はない。面倒な部分だけを変える方法もある

参考

紙のタイムカードをそのまま使いたい方へ

パシャ勤怠では、現在使っているタイムカードをスマートフォンで撮影して、勤怠データを自動集計できます。新しい打刻方法を従業員に覚えてもらう必要はありません。

「うちのタイムカードでも使えるのか」を確認したい場合は、対応しているタイムカード一覧適合チェックをご覧ください。実際のカードで試すことができます。