勤怠管理システムの比較表を見ると、どの製品も似たような機能が並びます。それでも導入がうまくいかないとき、原因は機能不足ではありません。毎日打刻する人が、その操作を毎日できるかどうかです。この記事では、打刻方法ごとに従業員側で何を覚えることになるのか、初期設定と月次の締めで誰がどこで詰まるのかを、導入現場の実務から整理します。
同じシステムを、3人の別々の人が触る
勤怠管理システムを評価するとき、多くの人は自分が触る画面だけを見ます。実際には3つの立場があり、求められるITスキルがまったく違います。
| 立場 | 操作の頻度 | 求められること |
|---|---|---|
| 打刻する従業員 | 毎日、1日2回以上 | 人数が最も多く、ITスキルの幅も最も広い。全員が同じ操作をできる必要がある |
| 勤怠を締める担当者 | 月に数回 | エラーを見つけて直す。エクセルの扱いに慣れていると楽になる |
| 初期設定をする人 | 最初の1回だけ | 就業規則を読んで設定に落とす。ITスキルより労務の知識が要る |
選定を担当する人は、たいてい3番目の立場にいます。管理画面を見て「これなら使えそうだ」と判断します。ところが毎日その製品に触るのは1番目の人たちで、その負担は管理画面には映りません。ここが導入後の齟齬になります。
打刻方法ごとの、従業員側のハードル
ハードルが低い順に並べます。判定の材料は2つだけです。本人が覚えることの数と、本人の端末が要るかどうかです。
| 打刻方法 | 本人が覚えること | 本人の端末 | つまずきやすい点 |
|---|---|---|---|
| 紙のタイムカード | なし。今までと同じ | 不要 | 集計を誰かが別途やることになる |
| ICカード・顔認証 共有タブレット |
かざす、立つ | 不要(会社が用意) | カードを忘れる。出退勤の時間帯に列ができる |
| PCブラウザ打刻 | IDとパスワードの入力 | 会社支給のPC | パスワードを忘れた問い合わせが定期的に出る |
| 個人スマホのアプリ | インストール、初回ログイン、通知の許可 | 私物のスマホ | 端末を持っていない人がいる。私物を業務に使うことへの抵抗 |
| GPS付きスマホ打刻 | 上記に加えて位置情報の許可 | 私物のスマホ | OSの更新で許可が外れると打刻できなくなる |
この順序は製品の優劣ではありません。全員にPCが支給されているオフィスなら、PCブラウザ打刻のハードルは実質ゼロです。同じ方法でも、職場によって難易度が変わります。自社がどこに当てはまるかを先に決めてから、製品を見てください。
全員に同じ方法を配らない
ひとつの職場でも、働き方は一様ではありません。事務所に毎日出社する人、現場に直行して直帰する人、複数の拠点を回る人が同居します。全員に同じ打刻方法を強いると、どこかに無理が出ます。
多くの勤怠管理システムは複数の打刻方法を持っており、事務所はPC、現場はICカード、直行直帰はスマホ、という使い分けができます。打刻方法をひとつに絞る必要はありません。
パシャ勤怠は、紙のタイムカードを撮影して読み取る方式を軸にしています。従業員は今までどおりカードに打刻するだけで、新しく覚える操作がありません。加えて、カードが手元にない場面のために、スマホから出勤・退勤・休憩開始・休憩終了を記録できます。月次集計の正本は紙のカードの読み取り結果に統一しているため、両方を使っても同じ日の労働時間を二重に数えることはありません。使い分けの考え方は記録方法の使い分けの記事で詳しく整理しています。
なお、パシャ勤怠は記録時の位置情報(GPS)を取得しません。従業員の居場所を追跡する仕組みは持たない設計です。そのぶん位置情報の許可を求める必要がなく、OSの更新で打刻できなくなる事故も起きません。
初期設定の重さは、自社の制度から来る
機能が多い製品ほど、最初に決めることが増えます。ここが導入の山場です。
設定するのは、所定労働時間、休憩の自動控除、締め日、割増率、法定休日の曜日、有給休暇の付与ルール、承認の経路といった項目です。これらは製品が決めてくれるものではなく、自社の就業規則から読み取って設定に落とす作業になります。常時10人以上の労働者を使用する事業場には労働基準法第89条で就業規則の作成と届出が義務づけられていますが、作った当時のまま実態と合っていない会社は珍しくありません。その場合は、まず就業規則の確認から始まります。
変形労働時間制を使っている場合はさらに重くなります。1年単位なら対象期間の労働日と労働時間を特定する必要があり、カレンダーを1年分登録する作業が発生します。この作業量は製品を替えても減りません。制度そのものが持っている重さだからです。
パシャ勤怠の初期設定は、従業員の登録と、所定労働時間・休憩・締め日の設定で30分から1時間が目安です。労働時間制は通常・1か月単位の変形労働時間制・フレックスタイム制から選べます。就業規則がまだ整っていない場合の初期値も用意してあり、そこから自社の実態に合わせて直せます。手順は導入ガイドにまとめています。
月次で詰まるのは、集計ではなく修正のとき
月次の締めそのものは、設定が終われば負担が下がります。日々やることは、打刻の抜けやエラーの一覧を見るだけです。担当者が詰まるのは、そこから先の直し方です。
- 本人が打刻を忘れた日の時刻を、誰がどうやって埋めるか
- 読み取り結果と実際の記入が違ったとき、どちらを正として直すか
- 直した記録に、誰がいつ直したかの履歴が残るか
3つ目は運用上の要になります。労働時間の記録は、賃金台帳などとあわせて労働基準法第109条で5年間の保存が求められる書類です。直した事実が残らない仕組みだと、後から根拠を示せません。
修正を担当者ひとりが抱えると、締めのたびに問い合わせの往復が発生します。パシャ勤怠では、従業員本人が自分の記録の修正を申請し、担当者が承認する流れを用意しています。本人が申請するので時刻の聞き取りが要らず、承認の記録もそのまま残ります。詳しくは修正申請の記事をご覧ください。
聞ける相手がいるか、聞かずに済むか
パソコンをあまり使わない職場では、チャットやメールでのやり取り自体が負担になります。自分がいま画面のどこを見ているのかを、文章で説明できないためです。「ボタンが押せません」という1行から始まって、状況が分かるまでに何往復もかかります。
この問題への答えは2つしかありません。電話で聞ける窓口を持つ製品を選ぶか、そもそも従業員が覚える操作を増やさないかです。前者を選ぶなら、電話サポートが標準で付くのか、有料のオプションなのかを契約前に確認してください。
パシャ勤怠は後者を徹底した設計です。従業員側は今までどおりカードに打刻するだけで、アプリのインストールもログインも発生しません。パスワードを忘れる人も、位置情報の許可が外れる人も出ません。問い合わせが起きる場所が、従業員全員から担当者ひとりに絞られます。
システムでは解決しないこと
打刻方法を変えても、打刻しない人は打刻しません。これは製品の問題ではなく運用の問題です。記録が残らなければ、労働安全衛生法第66条の8の3が求める労働時間の状況の把握もできません。
もうひとつ、自社の労働時間制度をどう設計するかは、製品選定より前の話です。変形労働時間制を使うべきか、フレックスタイム制を入れるべきか、固定残業代をどう設計するか。これらは就業規則と労使協定で決めることで、どの製品を選んでも決まりません。
当社では、総務の森の相談の広場(労務管理カテゴリ)に2020年1月から2026年6月までに投稿された6,082件を収集し、機械的に分類しました。このうち勤怠管理システムが扱う領域(労働時間・休暇・打刻・給与計算など)の相談は1,891件です。さらにその内訳を見ると、639件(1,891件中33.8%)は法令の解釈と個別事情の判断で、システムの機能では答えが出ない相談でした。勤怠管理システムが関わる相談のうち、3件に1件は製品選びの外側にあります。
制度の設計や個別事情の判断は社会保険労務士の領域です。相談先をお探しの場合は、社労士事務所を探すから地域と得意分野で絞り込めます。
よくある質問
従業員の平均年齢が高く、スマホを持っていない人もいます。何を選べばよいですか?
本人が覚えることが少ない方法を持つ製品が向きます。具体的にはICカード・顔認証・共有タブレットのように、会社が用意した端末にかざすだけで完了する方式です。共有端末を職場に置く形になるため、出退勤の時間帯に人が集中しないかもあわせて確認してください。打刻自体はこれまでの紙のタイムカードのまま続け、集計だけをデータ化する選び方もあります。
初期設定にどのくらいかかりますか?
パシャ勤怠の場合、従業員の登録と所定労働時間・休憩・締め日の設定で30分から1時間が目安です。画面の案内に沿って進められます。時間が延びるのは、就業規則が実態と合っておらず、そこから確認が必要になる場合です。
パソコンが苦手な担当者でも月次の締めができますか?
日々の運用は、打刻の抜けやエラーの一覧を確認するだけで済みます。差が出るのは修正が必要になったときの操作なので、無料お試し期間中に実際の締め作業を一度通してみてください。パシャ勤怠では従業員本人からの修正申請を承認する形にできるため、担当者が時刻を聞き取って入力し直す作業は発生しません。
- 打刻する人・締める人・設定する人でITスキルの要求が違う。選定者は3番目にいるので1番目の負担が見えにくい
- 打刻方法のハードルは「本人が覚えることの数」と「本人の端末が要るか」で決まる
- 業務で使えるスマホを持たない人が1人でもいると、個人スマホ方式は成立しない
- 初期設定の重さは製品ではなく自社の制度から来る。就業規則が実態と合っているかが先
- 月次で詰まるのは集計ではなく修正。誰がどう直し、履歴が残るかを決めておく
- 勤怠の相談1,891件のうち639件(33.8%)は解釈と個別判断で、製品選びでは解決しない
パシャ勤怠は、いまの打刻運用を変えずに集計だけを自動化するクラウド勤怠サービスです。従業員は今までどおりカードに打刻し、担当者はそれを撮影するだけで月次の集計が終わります。自社の働き方に合うかご不明な場合は、お問い合わせいただければ、実際の様式を見ながらお答えします。