シフト表の作成は、希望を集めて、人数を合わせて、法令上の制約に収めて、変更に対応する、という多層の調整作業です。時間がかかるのは表を書く作業そのものではなく、その前後の調整と伝達にあります。この記事では、シフト制で法令上おさえておくべき点を整理したうえで、作成の負担を減らす具体的な進め方を解説します。

時間がかかっているのはどの工程か

シフト作成の負担を減らすには、どこで時間を使っているかを分けて見る必要があります。工程はおおむね次の5つです。

工程 内容 重くなる原因
1. 希望の収集 各人の休み希望・勤務可能日を集める 提出方法がバラバラ、締切に遅れる人がいる
2. 人員の調整 時間帯ごとに必要人数を満たす 資格・スキルの条件、希望の重複
3. 法令の確認 休日・労働時間の上限に収める 週をまたぐ集計を手で数えている
4. 確定と周知 全員に伝える 掲示・紙配布だと見ていない人が出る
5. 変更対応 欠勤・交代を反映する 最新版がどれか分からなくなる

多くの職場で重いのは1と5です。表を組む作業(2と3)より、集めることと伝え直すことに時間が消えています。ここを先に手当てするのが近道です。

シフト制で明示が必要な労働条件

労働基準法15条により、使用者は労働契約を結ぶ際に労働条件を明示する義務があります。始業・終業の時刻は明示すべき事項に含まれます。シフト制の場合、契約時点で全日の時刻が決まっていないことが多いため、扱いに注意が必要です。

厚生労働省は2022年1月に、いわゆるシフト制で働く方の雇用管理についての留意事項を公表しています。その中では、契約の締結時に始業・終業時刻を可能な限り具体的に定めること、一定期間内の勤務日数や時間の目安をあらかじめ示しておくことなどが示されています。あわせて、シフトの作成・変更のルール(いつまでに通知するか、変更したい場合にどうするか)を契約や就業規則で決めておくことが、後々のトラブルを避けるうえで重要とされています。

また2024年4月からは、労働条件として明示すべき事項が追加されました。就業場所・業務の変更の範囲、有期契約の更新上限の有無と内容などが対象です。シフト制のパート・アルバイトを新たに雇う場面でも関係します。

実務のポイント 「シフトによる」とだけ書いた契約書は、後から「話が違う」という食い違いを生みやすい部分です。想定される勤務時間帯のパターン(例: 早番9:00〜17:00/遅番13:00〜21:00)と、月あたりの目安日数を書いておくと、双方の認識がそろいます。

法定休日と週40時間という枠

シフトを組むときに外せない枠が2つあります。

法定休日。労働基準法35条により、毎週少なくとも1日、または4週を通じて4日以上の休日を与える必要があります。連勤が続く組み方をすると、ここに抵触します。法定休日に働かせた場合は35%以上の割増賃金が必要です。法定休日と会社が定めるその他の休日の違いは法定休日と所定休日の違いで解説しています。

1日8時間・週40時間。この法定労働時間を超える部分は時間外労働となり、25%以上の割増賃金と36協定が必要です。シフト制では、1日は8時間以内でも週の合計で40時間を超えてしまう組み方になりやすいのが落とし穴です。週をまたいで数える必要があるため、月の表を眺めているだけでは気づきにくくなります。

見落としやすい点 週6日×7時間のシフトは、1日単位では8時間以内ですが週42時間となり、2時間が時間外労働になります。シフトを組んだ段階で残業が確定している状態なので、36協定の範囲に収まるかもあわせて確認してください。上限管理は36協定と残業時間の集計で解説しています。

変形労働時間制を使うかどうか

繁閑の差が大きい職場では、1か月単位の変形労働時間制を使うと、週40時間の枠を月単位で平均して判断できるようになります。忙しい週に長め、暇な週に短めのシフトを組んでも、平均が週40時間以内に収まっていれば時間外労働として扱わずに済みます。

ただし条件があります。労使協定または就業規則などで定めたうえで、対象期間の各日・各週の労働時間をあらかじめ特定しておく必要があります。「後から都合に合わせて動かす」ことを前提にした運用はできません。シフトを毎月きちんと事前確定して周知できる体制があって初めて機能する仕組みです。

比較項目 通常の労働時間制 1か月単位の変形労働時間制
週40時間の判定 各週ごとに判定 対象期間を平均して判定
繁閑への対応 忙しい週は時間外になりやすい 週ごとの長短を組める
必要な手続き 特になし 労使協定または就業規則等での定めが必要
シフトの事前確定 運用しだい 各日・各週の労働時間の事前特定が必要

導入の可否や手続きは職場の実情によって変わります。検討する場合は社会保険労務士か所轄の労働基準監督署にご相談ください。

作成をラクにする5つの工夫

1. 希望の集め方を1つに統一する

紙・口頭・チャットが混在していると、集約だけで時間が消えます。入力フォームか共有の表計算ファイルなど、提出先を1つに決めてください。提出期限と、期限に間に合わなかった場合の扱い(会社が割り当てる等)もあらかじめ周知しておきます。

2. 前月のシフトを雛形にする

毎月ゼロから組むのをやめ、前月分をコピーして変更点だけ直す形にします。固定シフトの人と変動する人を分けておくと、触る範囲がさらに狭くなります。

3. 必要人数を先に置く

個人の希望から埋め始めると、後半で人数が合わずにやり直しになります。先に時間帯ごとの必要人数を置き、その枠に人を当てはめる順番にすると手戻りが減ります。

4. 週の合計を自動で出す

週40時間の超過は手で数えると必ず漏れます。表計算なら週ごとの合計欄を作り、40を超えたら色が変わるようにしておくだけでも見落としが減ります。

5. 最新版の置き場所を1か所にする

変更のたびに配り直すのではなく、常に最新版が置かれている場所を決めて、そこを見てもらう運用にします。誰がいつ変更したかが残る形だと、言った言わないのトラブルも防げます。

シフト(予定)と勤怠(実績)は別物

混同されがちですが、シフト表は予定、勤怠は実績です。給与計算の根拠になるのは実際に働いた時間、つまり勤怠の記録のほうです。

シフトどおりに働いたとは限りません。残業、早上がり、交代、遅刻。実績は必ずずれます。シフト表の時間で給与計算をしてしまうと、実際の労働時間と支払いが合わなくなります。労働時間は客観的な方法で把握することが求められており、その考え方は労働時間の客観的把握義務とタイムカードで解説しています。

実務としては、シフトは予定表として運用し、実績はタイムカードなどの記録から集計する、と役割を分けるのが確実です。紙のタイムカードを使っている職場なら、撮影してデータ化すれば集計まで自動化できます。方法の比較はタイムカードをデータ化する5つの方法にまとめています。

まとめ

シフト作成の負担は、表を組む作業よりも希望の収集と変更の伝達に集中しています。まずそこを整えたうえで、法定休日と週40時間という枠を自動で見えるようにするのが順番として効率的です。繁閑の差が大きければ変形労働時間制も選択肢になりますが、シフトを事前確定できる体制が前提になります。

よくある質問

シフトは何日前までに通知しなければいけませんか?

法律で「何日前まで」と一律に決められているわけではありません。ただし直前の通知や一方的な変更はトラブルのもとになるため、通知の期限と変更の手続きを労働契約や就業規則で定めておくことが推奨されています。1か月単位の変形労働時間制を採用している場合は、対象期間の各日・各週の労働時間を事前に特定しておく必要があるため、対象期間が始まる前の確定が前提になります。

シフト制のパート・アルバイトにも有給休暇はありますか?

あります。所定労働日数が少ない方には比例付与という形で日数が決まります。付与日数が年10日以上になる方は、年5日を確実に取得させる義務の対象にもなります。日数の考え方は「有給休暇の付与日数は何日?」、年5日の義務は「有給休暇の年5日取得義務とは?」で解説しています。

変形労働時間制にすれば残業代は発生しませんか?

発生します。変形労働時間制は週40時間の判定を対象期間の平均で行う仕組みであり、割増賃金が不要になる制度ではありません。あらかじめ特定した労働時間を超えて働いた分や、対象期間を平均して週40時間を超えた分については、時間外労働として割増賃金の支払いが必要です。

この記事のまとめ
  • 時間を食っているのは表を組む作業ではなく、希望の収集と変更の伝達
  • シフト制でも始業・終業時刻は明示事項。作成・変更のルールを契約や就業規則で決めておく
  • 法定休日(週1日または4週4日)と週40時間の枠を外さない。週6日×7時間は週42時間で時間外が出る
  • 変形労働時間制は繁閑対応に有効だが、労使協定等の定めと事前確定が前提
  • シフトは予定、勤怠は実績。給与計算の根拠は実績の記録

制度に関する記述は公開時点の法令にもとづいています。個別の運用については、所轄の労働基準監督署または社会保険労務士にご確認ください。パシャ勤怠は、シフトどおりに働いたかどうかにかかわらず、紙のタイムカードを撮るだけで実績を集計できるクラウド勤怠サービスです。お問い合わせいただければ、1ヶ月の無料お試しでご確認いただけます。