月給制の社員が欠勤したとき、いくら控除するのが正しいのか。この問いに一つの正解はありません。労働基準法は欠勤控除の計算式を定めておらず、どう計算するかは会社が就業規則で決めることになっているためです。

ただし「決めていい」ことと「どう決めてもいい」ことは違います。割る日数の選び方によっては、1日欠勤しただけで実際の1日分より多く引いてしまう月が出てきます。この記事では3つの方式の違いと、控除しすぎを防ぐための考え方を整理します。

よくある困りごと

欠勤控除の誤りは、計算式そのものより、何日で割るか・何を欠勤として数えるかの取り違えで起きます。担当者がつまずきやすい場面を、起きることと理由に分けて並べます。

場面起きることなぜ起きるか
同じ1日の欠勤なのに、月によって引く額が違うと従業員に聞かれた担当者が説明できず、計算の誤りを疑われる当月の所定労働日数で割る方式では、所定労働日数の少ない月ほど1日単価が高くなるため(3つの方式と長所短所)
1か月まるごと休んだ人の控除額が、月給を超えた支給額がマイナスになる月平均所定労働日数で割る方式で、その月の所定労働日数が月平均より多いと起きるため(月平均方式で起きる「控除しすぎ」)
遅刻3回で1日分を引く運用を続けている働かなかった分を超えて引いた部分は、減給の制裁として扱われる欠勤控除と減給の制裁は別の制度で、制裁には労働基準法第91条の上限があるため(欠勤控除と減給制裁を混同しない)
有給を取った日や所定休日まで、出勤が無い日として引いていた払うべき賃金が不足する出勤が無いという点は同じでも、年次有給休暇は賃金の支払いが必要で、所定休日はもともと労働の義務が無いため(欠勤と有給と休日の切り分け)
就業規則に計算方法が書かれておらず、担当者が替わると金額が変わる月ごと・人ごとに控除額がぶれる賃金の計算の方法は就業規則の必要記載事項で、方式を決めていないと毎回の判断になるため(就業規則にどこまで書くか)

自分で確認・修正できること

次の順に1人分を確かめると、控除額のずれがどこで出たかが分かります。

  1. 就業規則(賃金規程)で、控除の対象にする賃金と、何日で割るかを確かめます(就業規則にどこまで書くか)。
  2. その月の出勤が無い日を、欠勤・年次有給休暇・所定休日に分けて数えます(欠勤と有給と休日の切り分け)。
  3. 月給と欠勤日数と割る日数を下の電卓に入れ、定めた方式の控除額を給与明細と比べます。3つの方式を並べると、方式の違いでいくら変わるかも分かります。
  4. 月平均所定労働日数で割る方式なら、控除額が月給を超えていないか、上限の定めがあるかを確かめます(月平均方式で起きる「控除しすぎ」)。
  5. 1日未満の遅刻・早退は、時間単位で別に計算します(遅刻・早退の控除の電卓)。

欠勤控除の電卓(3つの方式を比べる)

月給と欠勤日数、割る日数を入れると、方式ごとの1日単価と控除額が並びます。使っていない方式の欄は空のままでかまいません。

  • 年次有給休暇の日と所定休日は、欠勤日数に入れません。
  • 1日未満の遅刻・早退は、時間単位で計算します(遅刻・早退の控除の電卓は遅刻・早退の給与控除)。

この結果は概算です。確定額は給与計算ソフトか専門家にご確認ください。1日単価は丸めずに計算し、控除額の円未満は切り捨てています(働かなかった分より多く引かない向き)。どの方式で割るか、控除の対象にする賃金、控除額の上限は、就業規則の定めに合わせてください。

撮影したタイムカードから、パシャ勤怠が日ごとの出退勤と労働時間を集計します。

無料で試す

同じ月給を使う計算は、このカテゴリの記事にまとめています。残業代の時給単価は割増賃金の計算方法、半休の日の残業は半日有給を取った日の残業、有給の日数は有給休暇の付与日数で確かめられます。

欠勤控除は「全額払いの例外」ではない

最初に、よくある誤解を整理しておきます。

労働基準法第24条は、賃金は全額を支払わなければならないと定めています。ここから「欠勤控除は全額払いの原則の例外として認められている」と説明されることがありますが、これは正確ではありません。

働いていない時間について、そもそも賃金を請求する権利が発生していないからです。民法第624条第1項は、労働者は労務の履行後でなければ報酬を請求できないと定めています。労務の提供がなかった部分については賃金債権が発生せず、支払わなくても第24条に違反しません。これがノーワーク・ノーペイと呼ばれる考え方です。

この違いは言葉の遊びではありません。「例外だから認められる」のであれば例外の範囲が問題になりますが、「そもそも発生していない」のであれば、論点は控除の可否ではなく、いくら発生していないかという計算方法の妥当性に移ります。実務で問題になるのは、まさにこの計算方法のほうです。

月給は何日で割ればよいか|3つの方式と長所短所

月給から1日分を引くには、月給を何日かで割って1日単価を出します。この「何日で割るか」に3つの考え方があります。

【方式1】月平均所定労働日数で割る
年間の所定労働日数を12で割った値(例:年間240日なら20日)を使います。毎月同じ単価になるため、いつ欠勤しても1日あたりの控除額が変わりません。

【方式2】当月の所定労働日数で割る
その月の実際の所定労働日数を使います。全部欠勤すれば控除額が月給と一致するという整合性があります。

【方式3】固定の日数で割る
暦日数や30日など、あらかじめ決めた日数を使います。計算は最も簡単です。

3方式の比較(月給20万円・年間所定労働日数240日の場合)
方式割る日数1日単価長所短所
月平均所定労働日数20日(固定)10,000円毎月同じ単価。年間で公平所定日数が月平均より多い月に控除しすぎが起きる
当月の所定労働日数18〜23日(変動)約8,696〜11,111円全欠勤で月給と一致する同じ1日の欠勤でも月で金額が変わる
固定日数(30日など)30日(固定)6,667円計算が簡単実際の労働日と対応しない
どの方式が正しいという法令上の定めはありません。就業規則で明示することが重要です

1か月全部休んだら控除が月給を超えた|月平均方式で起きる「控除しすぎ」

方式1で注意が必要なのは、その月の所定労働日数が月平均からずれる月です。ずれは 2方向に出ます。

まず、所定労働日数が月平均より少ない月です。月平均20日の会社で、ある月の所定労働日数が18日だったとします。この月に18日すべて欠勤すると、控除額は10,000円×18日=18万円にとどまり、1日も働いていないのに2万円が残ります。これは控除が足りていない状態です。

問題が大きいのは逆方向です。月平均が20日で、所定労働日数が23日の月に23日すべて欠勤した場合はどうでしょうか。控除額は10,000円×23日=23万円となり、月給20万円を3万円超えてしまいます。全く働いていないのに賃金がマイナスになるという不合理な結果です。

これを防ぐため、方式1を採用する場合は「控除額は月額基本給を上限とする」あるいは「欠勤日数が所定労働日数の全部にわたる場合は基本給の全額を控除する」といった上限の定めを就業規則に置いておく必要があります。逆に、欠勤が月の大半に及ぶ場合は、控除ではなく出勤した日数分を支給する(日割り支給に切り替える)方式を併記する会社もあります。

欠勤控除と減給制裁を混同しない

欠勤控除としばしば混同されるのが、懲戒処分としての減給です。この2つはまったく別の制度です。

欠勤控除は、労働の提供がなかった分の賃金が発生しないという計算上の帰結です。制裁ではありません。

一方、減給制裁は、遅刻や職務上の非違行為に対する懲戒処分として、本来発生している賃金を減額するものです。こちらには労働基準法第91条による制限があります。1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならず、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならないという内容です。

重要なのは、第91条の制限が適用されるのは減給制裁だけだという点です。欠勤控除は制裁ではないため、この制限は及びません。逆に、遅刻30分に対して1時間分を控除するような場合、超過している30分相当分は労働の対価の不支給ではなく制裁にあたると評価される可能性があり、第91条の枠の中で判断されることになります。

就業規則にどこまで書くか

労働基準法第89条第2号は、賃金の決定、計算および支払の方法を就業規則の必要記載事項としています。欠勤控除の計算方法もここに含まれます。

最低限、次の点を明示しておくと運用の迷いがなくなります。

1. 控除の対象となる賃金項目(基本給のみか、諸手当を含むか)
2. 割る日数の考え方(3方式のどれか)
3. 1日未満の欠勤(遅刻・早退・私用外出)の扱いと単価
4. 控除額の上限

1点目は見落とされがちです。通勤手当や家族手当を控除の対象に含めるかどうかは会社の定めによります。実費補填の性格が強い手当を欠勤日数に応じて減額するかは、手当の趣旨と整合するように決めてください。

3点目については、1日未満の不就労を時間単位で控除するのが一般的です。この場合の1時間単価をどう求めるか(1日単価を所定労働時間で割るのか、月給を月平均所定労働時間で割るのか)も定めておきます。

集計側で必要になるのは「欠勤日数」と「不就労時間」の切り分け

計算方法が決まっていても、控除の対象となる日数と時間が正確に出ていなければ金額は出ません。

実務でつまずくのは、欠勤と年次有給休暇と休日の切り分けです。出勤していない日という点では同じでも、年次有給休暇は賃金の支払いが必要で、控除の対象になりません。所定休日はそもそも労働義務がないため、欠勤ではありません。紙のタイムカードには打刻がないという事実しか残らないため、休暇届などの別の記録と突き合わせて初めて判別できます。

また、遅刻・早退による不就労時間は1分単位で把握するのが原則です。日々の端数を切り捨てて集計すると、控除額の根拠が説明できなくなります。

出勤していない日が欠勤なのか有給なのか休日なのかが記録として残っていれば、控除額の計算は決まった手順の作業になります。記録が正確に残っていることは、後から金額の根拠を説明できるという点で、労使の双方を守ることにつながります。

この記事のまとめ
  • 欠勤控除は全額払いの例外ではなく、そもそも賃金請求権が発生していない
  • 割る日数は月平均所定労働日数・当月の所定労働日数・固定日数の3方式
  • 月平均方式は所定日数の多い月に控除額が月給を超えうるため上限の定めが必要
  • 労働基準法第91条の減給制裁の制限は、欠勤控除には適用されない
  • 控除対象の賃金項目・割る日数・1日未満の扱い・上限を就業規則に明示する

ここからは専門家へ

次の場面は、記事の手順で決めずに専門家へ相談します。相談先ごとに扱える業務の範囲が法律で決まっています。

場面相談先持っていく資料根拠
欠勤控除の方式・控除の対象にする賃金・控除額の上限を就業規則に定める、または変える社会保険労務士就業規則・賃金規程・年間カレンダー・直近の給与明細社会保険労務士法第27条(第2条第1項第1号から第2号までの事務)
遅刻・早退や欠勤を理由に、減給の制裁の定めを置くか判断がつかない社会保険労務士就業規則の懲戒の定め・遅刻と早退の記録社会保険労務士法第27条(第2条第1項第1号から第2号までの事務)
控除額をめぐって従業員と争いになった、または未払いの賃金を請求された弁護士届いた請求の書面・給与明細・タイムカード・就業規則弁護士法第72条
控除のしかたが法令に合っているか、行政の窓口で相談したい労働基準監督署/総合労働相談コーナー就業規則・給与明細相談の窓口(業務の制限の規定ではない)

社会保険労務士法第27条は、社会保険労務士又は社会保険労務士法人でない者が、他人の求めに応じ報酬を得て、第2条第1項第1号から第2号までの事務(労働社会保険諸法令に基づく申請書等の作成とその提出の代行、申請等の事務代理、個別労働関係紛争のあっせん等の手続の代理、帳簿書類の作成)を業として行うことを禁じています。

会社が自社の就業規則を作って届け出ることや、自社の社会保険・雇用保険の手続きをすることは、会社自身の事務で、第27条の「他人の求めに応じ報酬を得て」行う事務ではありません。社会保険労務士に相談するのは、規程の作り方や手続きの判断が自社でつかないときです。

弁護士法第72条は、弁護士又は弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で、訴訟事件その他一般の法律事件に関して鑑定・代理・仲裁・和解その他の法律事務を取り扱うことや、その周旋をすることを業とすることを禁じています。

次の一手

欠勤日数と不就労時間の切り分けは、打刻と休暇の記録が別々だと手作業の突き合わせになります。紙のタイムカードをそのまま使いながら集計だけを楽にしたい場合は、手元のカードをスマホで撮影してデータ化する「パシャ勤怠」をご検討ください。初期費用なし、月額100円/人(税抜)でお使いいただけます。

よくある質問

欠勤1日でいくら引くか、法律で決まった計算式はありますか?

労働基準法に計算式の定めはありません。就業規則で定めることになります。ただし賃金の計算方法は就業規則の必要記載事項(労働基準法第89条第2号)なので、定めずに運用することはできません。

1か月まるごと欠勤した人の控除を計算したら、月給より大きくなりました。どうすればよいですか?

月平均所定労働日数で割る方式で、その月の所定労働日数が月平均を上回る場合に起こります。「控除額は月額基本給を上限とする」といった定めを就業規則に置いて防いでください。

欠勤控除に労働基準法第91条の制限(10分の1)は適用されますか?

適用されません。第91条は懲戒処分としての減給制裁に対する制限です。欠勤控除は制裁ではなく、労働の提供がなかった分の賃金が発生しないという計算上の帰結です。

通勤手当も控除の対象になりますか?

会社の定めによります。実費を補填する性格の手当を欠勤日数に応じて減額するかは、その手当の趣旨と整合するように就業規則で決めてください。

病気で休んだ日を、あとから有給休暇に振り替えてもよいですか?

本人が希望し、会社が認めれば振り替えられます。年次有給休暇は本来、休む前に労働者が時季を指定して取るものなので、休んだ後に振り替えるかどうかは会社の取り扱いとして就業規則で決めておきます。振り替えた日は欠勤控除をせず、有給休暇の賃金を支払います。本人の希望がないのに、会社が欠勤を有給休暇にすることはできません。

月によって所定労働日数が違うのに、毎月同じ日数で割ってもよいですか?

かまいません。月平均所定労働日数で割る方式なら、毎月同じ1日単価になります。ただし、所定労働日数が月平均より多い月に全部欠勤すると、控除額が月給を超えることがあるので、「控除額は月額基本給を上限とする」といった定めを就業規則に置いておきます。どの方式を使うかも就業規則に書きます。