月給制の社員が欠勤したとき、いくら控除するのが正しいのか。この問いに一つの正解はありません。労働基準法は欠勤控除の計算式を定めておらず、どう計算するかは会社が就業規則で決めることになっているためです。

ただし「決めていい」ことと「どう決めてもいい」ことは違います。割る日数の選び方によっては、1日欠勤しただけで実際の1日分より多く引いてしまう月が出てきます。この記事では3つの方式の違いと、控除しすぎを防ぐための考え方を整理します。

欠勤控除は「全額払いの例外」ではない

最初に、よくある誤解を整理しておきます。

労働基準法第24条は、賃金は全額を支払わなければならないと定めています。ここから「欠勤控除は全額払いの原則の例外として認められている」と説明されることがありますが、これは正確ではありません。

働いていない時間について、そもそも賃金を請求する権利が発生していないからです。民法第624条第1項は、労働者は労務の履行後でなければ報酬を請求できないと定めています。労務の提供がなかった部分については賃金債権が発生せず、支払わなくても第24条に違反しません。これがノーワーク・ノーペイと呼ばれる考え方です。

この違いは言葉の遊びではありません。「例外だから認められる」のであれば例外の範囲が問題になりますが、「そもそも発生していない」のであれば、論点は控除の可否ではなく、いくら発生していないかという計算方法の妥当性に移ります。実務で問題になるのは、まさにこの計算方法のほうです。

3つの方式と、それぞれの長所短所

月給から1日分を引くには、月給を何日かで割って1日単価を出します。この「何日で割るか」に3つの考え方があります。

【方式1】月平均所定労働日数で割る
年間の所定労働日数を12で割った値(例:年間240日なら20日)を使います。毎月同じ単価になるため、いつ欠勤しても1日あたりの控除額が変わりません。

【方式2】当月の所定労働日数で割る
その月の実際の所定労働日数を使います。全部欠勤すれば控除額が月給と一致するという整合性があります。

【方式3】固定の日数で割る
暦日数や30日など、あらかじめ決めた日数を使います。計算は最も簡単です。

3方式の比較(月給20万円・年間所定労働日数240日の場合)
方式割る日数1日単価長所短所
月平均所定労働日数20日(固定)10,000円毎月同じ単価。年間で公平所定日数が月平均より多い月に控除しすぎが起きる
当月の所定労働日数18〜23日(変動)約8,696〜11,111円全欠勤で月給と一致する同じ1日の欠勤でも月で金額が変わる
固定日数(30日など)30日(固定)6,667円計算が簡単実際の労働日と対応しない
どの方式が正しいという法令上の定めはありません。就業規則で明示することが重要です

月平均方式で起きる「控除しすぎ」

方式1で注意が必要なのは、その月の所定労働日数が月平均からずれる月です。ずれは 2方向に出ます。

まず、所定労働日数が月平均より少ない月です。月平均20日の会社で、ある月の所定労働日数が18日だったとします。この月に18日すべて欠勤すると、控除額は10,000円×18日=18万円にとどまり、1日も働いていないのに2万円が残ります。これは控除が足りていない状態です。

問題が大きいのは逆方向です。月平均が20日で、所定労働日数が23日の月に23日すべて欠勤した場合はどうでしょうか。控除額は10,000円×23日=23万円となり、月給20万円を3万円超えてしまいます。全く働いていないのに賃金がマイナスになるという不合理な結果です。

これを防ぐため、方式1を採用する場合は「控除額は月額基本給を上限とする」あるいは「欠勤日数が所定労働日数の全部にわたる場合は基本給の全額を控除する」といった上限の定めを就業規則に置いておく必要があります。逆に、欠勤が月の大半に及ぶ場合は、控除ではなく出勤した日数分を支給する(日割り支給に切り替える)方式を併記する会社もあります。

欠勤控除と減給制裁を混同しない

欠勤控除としばしば混同されるのが、懲戒処分としての減給です。この2つはまったく別の制度です。

欠勤控除は、労働の提供がなかった分の賃金が発生しないという計算上の帰結です。制裁ではありません。

一方、減給制裁は、遅刻や職務上の非違行為に対する懲戒処分として、本来発生している賃金を減額するものです。こちらには労働基準法第91条による制限があります。1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならず、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならないという内容です。

重要なのは、第91条の制限が適用されるのは減給制裁だけだという点です。欠勤控除は制裁ではないため、この制限は及びません。逆に、遅刻30分に対して1時間分を控除するような場合、超過している30分相当分は労働の対価の不支給ではなく制裁にあたると評価される可能性があり、第91条の枠の中で判断されることになります。

就業規則にどこまで書くか

労働基準法第89条第2号は、賃金の決定、計算および支払の方法を就業規則の必要記載事項としています。欠勤控除の計算方法もここに含まれます。

最低限、次の点を明示しておくと運用の迷いがなくなります。

1. 控除の対象となる賃金項目(基本給のみか、諸手当を含むか)
2. 割る日数の考え方(3方式のどれか)
3. 1日未満の欠勤(遅刻・早退・私用外出)の扱いと単価
4. 控除額の上限

1点目は見落とされがちです。通勤手当や家族手当を控除の対象に含めるかどうかは会社の定めによります。実費補填の性格が強い手当を欠勤日数に応じて減額するかは、手当の趣旨と整合するように決めてください。

3点目については、1日未満の不就労を時間単位で控除するのが一般的です。この場合の1時間単価をどう求めるか(1日単価を所定労働時間で割るのか、月給を月平均所定労働時間で割るのか)も定めておきます。

集計側で必要になるのは「欠勤日数」と「不就労時間」の切り分け

計算方法が決まっていても、控除の対象となる日数と時間が正確に出ていなければ金額は出ません。

実務でつまずくのは、欠勤と年次有給休暇と休日の切り分けです。出勤していない日という点では同じでも、年次有給休暇は賃金の支払いが必要で、控除の対象になりません。所定休日はそもそも労働義務がないため、欠勤ではありません。紙のタイムカードには打刻がないという事実しか残らないため、休暇届などの別の記録と突き合わせて初めて判別できます。

また、遅刻・早退による不就労時間は1分単位で把握するのが原則です。日々の端数を切り捨てて集計すると、控除額の根拠が説明できなくなります。

出勤していない日が欠勤なのか有給なのか休日なのかが記録として残っていれば、控除額の計算は決まった手順の作業になります。記録が正確に残っていることは、後から金額の根拠を説明できるという点で、労使の双方を守ることにつながります。

この記事のまとめ
  • 欠勤控除は全額払いの例外ではなく、そもそも賃金請求権が発生していない
  • 割る日数は月平均所定労働日数・当月の所定労働日数・固定日数の3方式
  • 月平均方式は所定日数の多い月に控除額が月給を超えうるため上限の定めが必要
  • 労働基準法第91条の減給制裁の制限は、欠勤控除には適用されない
  • 控除対象の賃金項目・割る日数・1日未満の扱い・上限を就業規則に明示する

次の一手

欠勤日数と不就労時間の切り分けは、打刻と休暇の記録が別々だと手作業の突き合わせになります。紙のタイムカードをそのまま使いながら集計だけを楽にしたい場合は、手元のカードをスマホで撮影してデータ化する「パシャ勤怠」をご検討ください。初期費用なし、月額100円/人(税別)でお使いいただけます。

よくある質問

欠勤控除の計算方法は法律で決まっていますか?

労働基準法に計算式の定めはありません。就業規則で定めることになります。ただし賃金の計算方法は就業規則の必要記載事項(労働基準法第89条第2号)なので、定めずに運用することはできません。

全部欠勤した月に控除額が月給を超えてしまいます

月平均所定労働日数で割る方式で、その月の所定労働日数が月平均を上回る場合に起こります。「控除額は月額基本給を上限とする」といった定めを就業規則に置いて防いでください。

欠勤控除に労働基準法第91条の制限(10分の1)は適用されますか?

適用されません。第91条は懲戒処分としての減給制裁に対する制限です。欠勤控除は制裁ではなく、労働の提供がなかった分の賃金が発生しないという計算上の帰結です。

通勤手当も控除の対象になりますか?

会社の定めによります。実費を補填する性格の手当を欠勤日数に応じて減額するかは、その手当の趣旨と整合するように就業規則で決めてください。