勤怠のデータ化が終わっても、そのままでは給与は出ません。出力されたCSVやエクセルの各列が何を表していて、どの列にどの割増率を掛けるのかが分からないと、次の一歩に進めないためです。
この記事では、パシャ勤怠から出力されるファイルの項目を一つずつ確認しながら、給与計算のどこで使うのかを整理します。あわせて、計算式そのものよりも間違えやすい「どの時間を割増の対象と見るか」という判断について、どこまでが機械的に決まり、どこからが自社の就業規則や労使協定に依存するのかの線引きも示します。
出力される2種類のファイルと、その役割の違い
パシャ勤怠から出力できるファイルは2種類あり、用途が異なります。
CSVは1日1行の日次明細です。従業員IDと日付をキーにした素のデータなので、給与計算ソフトへの取り込みや、自社のエクセル集計表への貼り付けに向いています。
エクセルは2階建てになっています。1枚目が従業員ごと1行の月間集計シート、2枚目以降が従業員ごとの日次シートです。月間集計シートは給与計算の入力値をそのまま拾える形になっており、日次シートは「この残業時間はどの日から来たのか」を確認するための裏付けとして使います。
金額の計算そのものはどちらのファイルにも含まれていません。出てくるのは時間数と日数です。ここに賃金単価と割増率を掛けるのが、給与計算側の仕事になります。
日次明細(CSV)の列の意味
CSVには次の15列が出力されます。給与計算で直接使うのは「実労働(分)」以降の時間の列です。
分単位で出力されるのは、労働時間を1分単位で把握するのが原則だからです。時給を掛ける際は、分を60で割って10進法の時間数に直してから計算します。30分は0.5、45分は0.75です。
もう1点、給与計算で見落とすと大きい仕様があります。休日として扱われた日は、「所定内(分)」と「残業(分)」がどちらも0になり、その日の労働時間は「実労働(分)」にだけ出ます。休日労働は所定内・残業とは別の枠で判定するためです。したがって、月の労働時間を「所定内(分)+残業(分)」の合計で求めると、休日に働いた分がまるごと抜け落ちます。休日の行は「実労働(分)」と「休日区分」の組み合わせで拾ってください。
| 列 | 意味 | 給与計算での使い方 |
|---|---|---|
| 従業員ID / 氏名 | 誰の記録か | 給与マスタとの突合キー |
| 日付 | 対象日 | 日別の割増判定の単位 |
| 出勤 / 退勤 | 打刻時刻 | 時間数の根拠。差異調査に使う |
| 休憩(分) | 休憩時間 | 実労働から除かれている時間 |
| 実労働(分) | 実際に働いた時間 | 基礎の賃金を計算する土台 |
| 所定内(分) | 所定労働時間内の労働 | 通常の賃金(割増なし) |
| 残業(分) | 所定を超えた労働 | 割増の判定対象 |
| 遅刻(分) / 早退(分) | 不就労の時間 | 控除する場合の材料 |
| 深夜(分) | 深夜帯に働いた時間(内数) | 深夜割増を加算する対象 |
| 休日 | 休日かどうか(1/0) | 休日労働の判定 |
| 休日区分 | 法定 / 所定 / 空欄(平日) | 35%か25%かの分岐 |
| ステータス | normal / absent / paid_leave / late / early_leave | 欠勤・有休の判定 |
最も間違えやすいのは「深夜(分)」の扱い
給与計算で最も誤りが起きやすいのがこの列です。
「深夜(分)」は、勤務した時間のうち深夜帯(既定では22時から翌5時まで)と重なった時間を表します。重要なのは、これが実労働時間の内数だという点です。実労働8時間のうち2時間が深夜帯にかかっていれば、実労働(分)は480、深夜(分)は120と出力されます。実労働の外側に追加で2時間働いたわけではありません。
したがって、深夜の分について支払うのは割増部分だけです。基礎となる賃金は実労働時間の中で既に計算されているため、深夜時間分の賃金をもう一度満額で加算すると二重払いになります。
労働基準法第37条第4項は、深夜(午後10時から午前5時まで)の労働について2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならないと定めています。時間外労働が深夜帯にかかった場合は、時間外の割増と深夜の割増がそれぞれ加算されます。
月間集計(エクセル)の項目と、給与計算への流し込み
エクセルの1枚目、月間集計シートには次の項目が並びます。給与計算ソフトの入力欄にほぼそのまま対応する粒度です。
実労働時間・残業時間・深夜時間はここでは時間表示になっており、分単位の日次データを月間で合計した値です。日次で1分単位に把握したうえで月間で合計するという順序が守られています。
| 項目 | 内容 | 対応する割増の考え方 |
|---|---|---|
| 出勤日数 | 出勤した日数 | 日額単価を使う場合の基礎 |
| 実労働時間 | 月間の実労働の合計 | 基礎の賃金 |
| 残業時間 | 月間の残業の合計 | 2割5分以上 |
| 60h超残業 | 月60時間を超えた残業 | 5割以上 |
| 深夜時間 | 深夜帯にかかった時間(内数) | 2割5分以上を加算 |
| 遅刻 / 早退 | 不就労時間 | 控除の材料 |
| 休日出勤 | 法定休日の労働 | 3割5分以上 |
| 所定休日出勤 | 法定外休日の労働 | 週40時間超の部分が2割5分以上 |
| 欠勤日数 | 欠勤した日数 | 欠勤控除の材料 |
| 有休取得日数 | 年次有給休暇の取得日数 | 賃金の支払いが必要 |
「休日出勤」と「所定休日出勤」を分けている理由
月間集計シートで休日の出勤が2つに分かれているのは、割増率と集計の扱いが違うためです。
労働基準法第35条が求めているのは週1回(または4週4日)の休日です。これを満たす休日が法定休日で、週休2日制のもう1日は所定休日(法定外休日)です。
法定休日の労働は3割5分以上の割増になります。一方、所定休日の労働は休日労働の割増ではなく、その週の労働時間が40時間を超えた部分が時間外労働として2割5分以上になります。同じ「土曜出勤」でも、どちらに区分されるかで支払額が変わります。
CSVの「休日区分」列に法定・所定と出力されるのはこの区分です。列が空欄の場合は平日を意味します。
どの曜日を法定休日とするかは、就業規則で特定していればそれに従います。特定していない場合は、暦週の中の実際の休日の取得状況から判断することになり、月末ごとに判定が必要になります。
機械的に決まること、決まらないこと
ここまで見てきた列のうち、打刻から機械的に決まるのは「実際に何時から何時まで働いたか」という事実の部分です。実労働、深夜帯との重なり、日付といった値がこれにあたります。
一方で、次のような点は打刻の記録だけでは決まりません。自社の就業規則や労使協定、契約内容によって答えが変わります。
- ・所定労働時間を何時間と定めているか(所定内と残業の境界が動きます)
- ・どの曜日を法定休日とするか
- ・変形労働時間制を採用しているか(週や月単位で法定労働時間の枠が変わります)
- ・管理監督者に該当するか(時間外・休日の割増の扱いが変わります)
- ・固定残業代を採用している場合、何時間分が含まれているか
- ・休憩や中抜けをどう扱うか
出力された数字が正しくても、この前提の設定が実態と合っていなければ、給与計算の結果は合いません。設定を見直すべきか、現在の運用のままでよいのかは、個々の会社の事情を踏まえた判断になります。
判断に迷う部分は社労士に相談する
前項に挙げたような論点は、法令の条文を読むだけでは決められません。自社の勤務実態と就業規則、労使協定の内容を突き合わせたうえで判断する必要があり、判断を誤ると賃金の未払いや、逆に過大な支払いにつながります。
パシャ勤怠では、社会保険労務士事務所を掲載した<a href="/sharoushi-directory">社労士ディレクトリ</a>を公開しています。労働時間や割増賃金の考え方、就業規則の整備について相談できる事務所を探せます。
出力された項目の意味そのもの(どの列が何を表すか)はこの記事で確認していただけますが、その時間数を自社の制度に照らしてどう判断するかについては、専門家に確認いただくのが確実です。特に、変形労働時間制や固定残業代を採用している場合、管理監督者の範囲に迷いがある場合は、早めに相談されることをおすすめします。
なお、給与計算の代行そのものは社会保険労務士の独占業務ではありませんが、労働社会保険諸法令に基づく手続きや就業規則の作成・変更の届出については社会保険労務士法に定めがあります。どこまでを依頼するかは、事務所ごとの取扱い範囲を確認してください。
- CSVは1日1行の日次明細、エクセルは月間集計と個人別日次の2階建て
- 「深夜(分)」は実労働の内数。加算するのは割増部分のみで、基礎の賃金を二重に払わない
- 休日の行は「所定内(分)」「残業(分)」がともに0。所定内+残業で合計すると休日労働が抜ける
- 「休日区分」が法定なら3割5分、所定なら週40時間超の部分が2割5分
- 分単位で出力されるため、時給を掛ける前に60で割って10進法に直す
- 所定労働時間の設定や法定休日の特定など、前提の判断は社労士に相談するのが確実
次の一手
紙のタイムカードをスマホで撮影してデータ化し、この記事で解説したCSV・エクセルの形で出力できるのが「パシャ勤怠」です。初期費用なし、月額100円/人(税別)でお使いいただけます。
よくある質問
深夜時間は実労働時間に足すのですか?
足しません。深夜(分)は実労働時間のうち深夜帯と重なった時間を表す内数です。基礎の賃金は実労働時間で計算済みのため、深夜については割増部分のみを加算します。
CSVとエクセルはどちらを使えばよいですか?
給与計算ソフトへの取り込みや自社集計表への貼り付けにはCSV、担当者が月間の数字を確認したり日別の内訳をさかのぼったりする用途にはエクセルが向いています。
休日の行の「所定内(分)」「残業(分)」が0になっています
仕様どおりです。休日として扱われた日は所定内・残業のどちらにも計上されず、労働時間は「実労働(分)」にのみ出力されます。休日労働は別の枠で判定するためで、月合計を所定内+残業で求めると休日分が抜け落ちます。
「休日区分」が空欄の行があります
空欄は平日を意味します。法定休日なら「法定」、所定休日(法定外休日)なら「所定」と出力されます。
出力された残業時間と自社の計算が合いません
所定労働時間の設定、法定休日の曜日、変形労働時間制の有無など、前提の設定が実態と合っているかをご確認ください。設定の妥当性の判断は社労士ディレクトリ掲載の事務所にご相談いただけます。