2026年に中小企業へ効く労務の改正は、7月に施行済みの「障害者法定雇用率2.7%への引き上げ(対象が37.5人以上に拡大)」と、2026年4月以降に順次施行される「カスタマーハラスメント対策の義務化」です。あわせて、2025年に施行済みの育児・介護休業法改正への対応と、2028年4月に施行が予定されるストレスチェック義務拡大の準備も見ておきましょう。本記事は社労士実務の視点で、「いつまでに、何をするか」に絞って新旧比較で整理します。
2026年の法改正・新旧比較早見表
2026年から2028年にかけて、中小企業に影響する法改正をまとめました。障害者雇用率の引き上げはすでに施行済みで、対象になった企業には今まさに義務が生じています。
| 改正内容 | 旧・改正前 | 新・改正後 | 施行日 |
|---|---|---|---|
| 障害者法定雇用率 | 2.5%(常用労働者40人以上) | 2.7%(常用労働者37.5人以上) | 2026年7月(施行済み) |
| カスハラ対策 | 明文の義務規定なし | 対策が義務化(具体的な内容は今後の指針等で示される) | 2026年4月以降、順次 |
| 柔軟な働き方措置(育児) | 義務なし | 2つ以上の措置を講じ、労働者が選択できるよう義務化 | 2025年10月(施行済み) |
| ストレスチェック | 50人以上は義務・50人未満は努力義務 | 50人未満の事業場も義務化 | 2028年4月(予定) |
障害者法定雇用率が2.7%へ引き上げ(2026年7月・施行済み)
2026年7月に、民間企業の障害者法定雇用率は2.5%から2.7%に引き上げられました(施行済み)。 同時に、対象となる企業の範囲も広がっています。
新たに対象になる企業:常用労働者37.5人以上40人未満
これまでは常用労働者40.0人以上の企業に雇用義務がありました。改正後は37.5人以上の企業が対象です。新たに義務が生じるのは常用労働者37.5人以上40.0人未満の企業で、障害者を1人以上雇用する義務があります(40.0人以上の企業は従来から義務対象です)。
対象の判定は「常用労働者数」で行います。社労士実務でまず確認するのはこの数え方です。短時間労働者の算定には所定のルールがあるため、自社の常用労働者数が37.5人のラインに近い場合は、算定方法を社労士に確認してから判断してください。
カスハラ対策が義務化(2026年4月以降、順次施行)
2025年6月11日に公布された労働施策総合推進法等の改正により、顧客などからのカスタマーハラスメント(カスハラ)への対策が企業の義務になります。 多くの規定は2026年4月1日以降、順次施行されます。義務の具体的な内容(何をどこまで求められるか)は、今後示される指針等で具体化されるため、確定情報は厚生労働省の公表をご確認ください。
実務の準備(社労士メモ)
指針の公表を待つ間に、次の準備を進めておくと対応が速くなります。いずれも「法律上の義務」として確定したものではなく、実務上の先回りです。
- 従業員が相談できる窓口と担当者を決めておく
- 「組織として従業員を守る」という顧客対応の基本方針を文書にしておく
- 実際に事案が起きたときの記録の残し方を決めておく
対面接客や電話対応の多い小売業・飲食業・運送業などでは、早めの準備が有効です。
最新情報: 厚生労働省の公表資料(指針等)をご確認ください。
育児・介護休業法改正への対応
育児・介護休業法は2024年に改正され、2025年4月から10月にかけて、段階的に施行されています。以下のポイントに対応が必要です。
2025年4月1日施行:介護離職防止の措置が義務化
介護に直面した労働者に対して、以下の措置を講じることが義務になりました。
- 個別の制度周知(介護休業や両立支援制度の説明)
- 労働者の意向確認
- 40歳到達時の両立支援制度などの早期情報提供
2025年4月1日施行:残業免除の対象拡大と育児休業取得率の公表義務拡大
子を養育する労働者に対する残業の免除対象が、3歳までから小学校就学前までに拡大されました。これにより、対象者ごとの労働時間管理がより細かくなります。
また、男性の育児休業取得率などの公表義務が、従業員1,000人超から300人超の企業に拡大されました。
2025年10月1日施行:柔軟な働き方措置の義務化
3歳から小学校就学前の子を養育する労働者に対して、企業は、始業時刻等の変更・テレワーク・短時間勤務・新たな休暇の付与などの措置から2つ以上を講じ、労働者が1つを選択できるようにすることが義務化されました。代表的な選択肢は次のとおりです(例示)。
- 始業時刻や終業時刻の変更
- テレワークの導入
- 短時間勤務制度
- 新たな休暇の付与
個別の周知と労働者の意向確認も同時に義務化されており、従業員ごとの勤務パターンの区分管理が複雑になります。
ストレスチェック義務が50人未満にも拡大(2028年4月予定)
労働安全衛生法の改正(2025年5月14日公布)により、ストレスチェックの実施義務が50人未満の事業場にも拡大されます。 施行日は2028年4月1日とされています(労働政策審議会で示された予定)。現行では50人以上の事業場が義務、50人未満は努力義務です。
実施までのタイムライン
施行後は、50人未満の事業場にも実施義務が生じます。義務化から1年以内(2029年3月31日まで)に、最初のストレスチェックを実施する必要があります。判定の単位は会社全体ではなく「事業場」である点に注意してください(社労士メモ: 複数拠点がある会社は拠点ごとに判定します)。
50人未満の事業場を持つ会社は新たに対応が必要になるため、あらかじめ実施の仕組みを検討しておくことが重要です。
最新情報: 施行日・実施方法の詳細は厚生労働省の公表資料をご確認ください。
復習:すでに施行済みの重要ルール
2026年の法改正に加えて、すでに施行されている重要なルールも確認しておきましょう。
労働条件明示ルール(2024年4月施行)
採用時に労働者へ提示する労働条件に、就業場所と業務の変更の範囲を明示することが必須になりました。転勤やジョブローテーションが想定される場合は、その旨を明示する必要があります。
月60時間超の時間外労働の割増賃金率が中小企業にも適用(2023年4月〜)
月60時間を超える時間外労働の割増賃金率は50%です。中小企業への適用猶予は終了しており、2023年4月から全企業に適用されています。
労働時間の状況の客観的把握(2019年4月〜)と記録の保存
労働時間の状況は、タイムカードやパソコンの使用記録など客観的な方法で把握する義務があります(労働安全衛生法66条の8の3)。また、賃金台帳・出勤簿など労働関係の重要書類には5年(当分の間は3年)の保存義務があります(労働基準法109条)。根拠条文が別である点に注意してください。
中小企業がいま準備すること
1. 従業員数を正確に把握する
障害者雇用率(常用労働者37.5人以上)やストレスチェック(事業場50人)の判定など、法的義務の多くが「人数」を基準に決まります。正社員・パート・契約社員など、雇用形態ごとの人数を毎月正確に把握できる状態にしておくことが、すべての法改正対応の土台です。
2. 勤務形態ごとの労働時間・休暇を管理できる状態にする
育児・介護休業法改正により、育児休業対象者、柔軟な働き方措置の対象者、残業免除対象者など、従業員ごとに異なる労働時間・休暇ルールを管理する必要があります。エクセル管理だと対応が難しくなるため、データ化と記録の仕組みを整える準備が重要です。
3. 記録を保存できる形で残す
タイムカード等による記録は、労働時間の客観的把握の適法な手段です。実務の課題は把握そのものよりも、毎月の集計と5年(当分の間3年)の保存を続ける運用の手間にあります。紙のまま運用する場合も、撮影した画像と集計データで保存すれば、後から探せる形で残せます。カスハラ相談や育児・介護の手続きも、記録を残す体制づくりが有効です。
パシャ勤怠は、紙のタイムカードをOCRでデータ化し、従業員ごとの勤務実績を正確に記録・保存できるサービスです。法改正への対応では、正確な従業員数把握と勤務時間の記録が最初の一歩になります。お問い合わせいただければ、貴社の現在のタイムカード運用から、どのような対応が必要になるかご相談いただけます。
本記事は2026年7月14日時点の情報に基づく一般的な解説です。個別の運用は所轄の労働基準監督署または社会保険労務士にご確認ください。
- 2026年7月(施行済み):障害者法定雇用率が2.5%から2.7%に、対象が37.5人以上に拡大
- 2026年4月以降、順次:カスハラ対策が義務化(具体的な内容は指針等で示される)
- 2025年施行済み:育児・介護休業法改正で、柔軟な働き方措置が義務化、残業免除対象が拡大
- 2028年4月(予定):ストレスチェック義務が50人未満の事業場にも拡大。あらかじめ準備を